【アカデミー賞】「SKIN 短編」について考える【ネタバレ感想】

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人種問題のリアルな構造

KOX
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今回はアカデミー賞を受賞した短編映画「SKIN」をレビューしマス。

筆者評価は★4.2

出演:ジョナサン・タッカーら

監督:ガイ・ナティーブ

元々人種問題系の作品に興味が強い方なので、なんの気無しに見てみた本作。

20分という短い尺の中に、しっかりとメッセージ性と予想できない結末が描かれており、非常に洗練されている作品でした。

これはアカデミー賞受賞の理由も頷けますね。

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ざっくりあらすじ(ネタバレ)

レイシストの父親と、母親、そしてその子、トロイ。彼ら一家は、同じくレイシストの白人グループで行動しています。

彼らは皆、「卍」の刺青を入れており、このことから「ネオナチ」であることがわかります。

射撃場に行って、みんなで缶を撃ったりします。トロイも、この遊びに加わり、年齢のわりに上等な射撃能力を披露します。

夜、スーパーで買い物をしているトロイ一家。

レジで会計していると、隣のレジに黒人の男性が。トロイは何の気なしにその男性を眺めます。

男性はトロイの視線に気がつくと、持っていたおもちゃを使って、トロイを笑わせます。

するとトロイの父が、これに気がつきます。「おい、俺の息子にちょっかい出したか?」

黒人の男性は驚くような、呆れるような表情で、「おもちゃを見せただけだよ」と言いますが

「クソNが抵抗すんのか?」と喧嘩に。去っていく黒人男性を後ろから殴りかかり、他の白人仲間とみんなでリンチします。

数日後。トロイと父親が遊びに出た帰り、道を塞ぐようにして車が止まっていました。トロイの父親は車を降りて、どけと言いに行きます。

すると途端に車から男が何人も降りてきて、父親は拉致られてしまいます。

10日後、トロイの父は道の真ん中に捨てられ、解放されます。

トロイの父は、10日間の拉致の間、身体中全てを覆うように刺青を入れられていました。

家に帰ってきますが、妻は黒人が家に来たものだと思い、銃を向けます。

「俺だよ…俺だよ… 」と言い、やっと自分の夫であることがわかりますが、その瞬間、銃声が。

それは、トロイでした。

トロイが、父親の仇である黒人と勘違いして、父親を撃ってしまうのです。

母親は絶句し、映画は終了です。

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子供の視線

本作でキーになるのは、もちろん肌の色ですが、もう一つ重要なのは「子供」です。

無垢の存在である子供が、事象と環境によって、色がついてゆく様を描いています。

トロイが黒人男性へ向けた視線。黒人男性がボコボコにされている時の、黒人男性の子供の視線。

去りゆくトロイと、黒人少年のぶつかる視線。

この辺りが非常に良くできています。

特に去りゆくトロイと、黒人少年の視線は、ボコボコにした側とされた側という対局にある存在にもかかわらず、同じく「疑問」や「悲しみ」が感じられる視線となっていました。

溝は埋まらない

ジョージ・フロイドさんが白人警官に取り押さえられた末死亡した事件によって、日本でも人種差別に反対する声が高まりました。

ですが「人種差別はやめろ!」と頭ごなしに高らかに叫んだところで、全く意味を成しません。

人種差別は、単に「肌の色が違うこと」だけに起因した事象ではないということが、本作を見ることでわかります。

レイシストのコミュニティで生まれ育つ子供と、黒人のコミュニティで育つ子供は、本人の意思に関係なく、忌み嫌う関係となります。

その上で、お互い、「父親にひどいことをした人たち」という認識となり、その憎悪は人種を超えます。

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「他人種を忌む」ことに、理由が付与されていまいマス。

重要なのは、この理由の付与に抵抗する力がないということデス。

本当の意味で人種差別問題をなくすことは、こうしたコミュニティや社会のあり方から考えていかなくてはいけません。

その難しさと残酷さを教えてくれる映画です。

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悲しくも最も恐ろしい復讐

ボコボコにした主犯格であるトロイの父親に対し、黒人グループが取った手段は、「ボコボコにする」ではありませんでした。

全身に刺青を彫り、全ての肌を黒くしたのです。

レイシストが最も忌み嫌っている「黒人」にさせるという、復讐だったのです。

非常に悲しい復讐ではありますが、これが最もレイシストに効く復讐です。

そしてトロイの父は、最愛の存在である息子に銃で撃たれ、死んでいくのです。

トロイの父が黒人化させられるのは、実は黒人男性をボコボコにしたシーンで伏線が張られていました。

トロイの父は最後、黒人男性に牛乳をかけます。ここで黒人男性の顔が真っ白になります。

黒人男性を白く染めたトロイの父親が、最後には真っ黒になるという対比が、ここで描かれているのです。

まとめ

animal arctic blur canine
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今回は、アカデミー賞受賞の短編映画「SKIN」をレビュー・考察しまシタ。

人種問題を頭ごなしに「ダメ、絶対」と描くのではなく、リアルな構造や真の被害者としての「子供」を描いた良作でした。

20分という短い時間の中で、これだけのメッセージを描けるのは素晴らしいです。

人種問題に興味のある方はぜひみてみてほしい作品です。

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