【映画レビュー】「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」【ネタバレ感想考察】

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確かな「現代アニメ」の結晶

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今回は2020年公開のアニメ映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」をレビューしマス。

筆者評価は★4.5

出演:石川由依/子安武人/浪川大輔

監督:石立太一

2018年からTVアニメシリーズとして人気を博した「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズの正当な続編・完結編としての劇場版作品です。

本作品を見る前に、TVアニメシリーズ全編・OVA・外伝など見てから見ることをお勧めします。

昨今のアニメ作品に対していいイメージを持っておらず、「泣ける泣ける」と言われている作品、感動ポルノ作品に対して嫌悪を持っている僕ですが、正直にいって感動しました。

人並みな感想になりますが、「現代アニメ」としての結晶のような作品で、作成した「京都アニメーション」の方々がいかに頭がいいかということが伺える作品でした。

また声優の石川由依のもはや演技の枠を超えた、声優の限界点突破とも言える演技に脱帽です。

また、本作は2019年に発生した京アニ放火殺人事件の翌年コロナ禍に公開されており、京アニにとっても大きな困難に立ち向かった作品です。

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ざっくりあらすじ(ネタバレ)

ヴァイオレットの客であるアンの孫、デイジーが祖母アンの持ち物から手紙を発見。その手紙は50年間、ヴァイオレット・エヴァーガーデンという女性から書かれたことを知り、デイジーは彼女の足取りを追い、ライデンシャフトリヒという国へ向かうのでした。

時は変わってヴァイオレットは、戦争で生死不明となっているギルベルト少佐から受け取った「あいしてる」の言葉の意味を知るため、郵便社で自動手記人形として代筆業を続けています。

上司であるホッジンズはある日、郵便車の倉庫に1通の手紙を発見します。その字体はギルベルト少佐のそれと酷似していました。

確認のため、差出人住所に向かうホッジンズとヴァイオレット。そこにいたのは、右腕と左目を失ったギルベルト少佐でした。

いったんヴァイオレットを外に待たせているホッジンズですが、ギルベルトから「ヴァイオレットには会えない」と言われ、その旨をヴァイオレットに伝えます。

取り乱したヴァイオレットは、ギルベルトの家まで向かいます。が、直接帰ってくれと言われ、いったん宿まで。手紙を子供に託したヴァイオレットは、船に乗り込みます。

手紙を受け取ったギルベルトは、ヴァイオレットのもとへ走りゆきます。その姿を確認したヴァイオレットは、海へ飛び込み、ギルベルトの元へ。

2人は抱き合います。

時は変わって、デイジーはヴァイオレットが18歳の時、ライデンを出てギルベルトの元へいったことを知ります。

そしてこの島でのみ発売されている切手には、島に愛された郵便局員、ヴァイオレットの姿がありました。

終わり

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レビュー文化と説明的作品

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昨今は誰もが作品をレビューし、コメントを寄せることができます。

それを見て、あたかも自分の中の評価と錯誤することもあります。

そもそもレビューを見て、評価が低いと見てもらうことさえなくなります。

ソート機能で評価4以上とか、評価3以上などで検索をかけられてしまうのです。

ゆえに現代の作品では、より「多くの人に、満遍なく面白い」と思ってもらう必要があります。

その条件を満たすため、「映画の意味」は1意である必要があります。

「余白」をもたせ、その余白は観客に想像してもらう。という映画のあり方は、現代的ではないと言えます。(良くも悪くも)

そのため、「説明的なセリフ」がかなり多いのが現代作品の特徴です。

本作「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」も例に漏れず、そういった作品です。

冒頭のデイジーのセリフを例にとれば、一人で祖母の持ち物を手に取っては、「これは〇〇の手紙?」「ひいおばあちゃんはおばあちゃんに1年ごとに手紙を送って、本当に心配していたんだ…!」といったような独り言を言います。

今、どこに着目すべきか。どんな感情でこの映像を見ればいいか。こういった情報を整理していような台詞が列挙されます。

この、「説明的作品」は作品全体の質下げる可能性が非常に高いですが、本作は「手紙」というシステムを物語の柱に据えることで、上手に昇華しています。(ここが京アニの天才ポイント)

手紙を書き、それを読むことによって、スムーズかつ情報説明的に物語を進行することができ、「ここが一番伝えたいことですよ」というポイントを強調することができます。

こういった、時代の流れを上手に汲み、作品の中に織り込んで行くのが非常に上手いです。

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圧倒的な主人公の確立

本作の題名でもあり、主人公でもあるヴァイオレットのキャラクター構築が素晴らしいです。

特に外見的な面で言えば、昨今の女性キャラクターでは極端なまでに肥大化したバストや、露出度の高い服などが多い中、

顔以外が全て覆われている服、両腕が義手、平均的なスタイルなど、みだらに「性」を感じさせない造形がなされている点は、かなり評価できます

「感情がわからない」というところからスタートしたアニメシリーズでは、多くの仕事をこなす中で段々と感情を理解し、「愛してる」の意味を知っていく様子を楽しみます。

その時の観客は、ヴァイオレットの親であり、恋人でもあります。ヴァイオレットの成長を見届けていくのです。

アニメシリーズでの物語の主軸は実はヴァイオレットではなく、それぞれの「お客さま」になっています。この際、ヴァイオレットは助演に回っています。

それでいながら、ヴァイオレットの主人公としてのキャラクター造形の深さによって、物語に1本大きな筋が通っているのです

アニメ作品を通して、ヴァイオレットがギルベルトのことを想い続けている様子が描かれ、観客もこうしたヴァイオレットの様子に共感し、応援していく作りになっています。

そんなギルベルトの生存が確認された時の心境は、京アニに繊細かつ丁寧にデザインされています。

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タブーを犯してなお

僕は前情報なしで本作を鑑賞したのですが、正直いってかなり驚きました。

それは、「ギルベルト少佐が生きていた」ということです。

本作「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の物語の中核は、もう会えない「ギルベルト少佐」から受け取った「あいしてる」の意味をヴァイオレットが人生をかけて探していく、果てしない愛の物語でした。

しかし、映画ではこのギルベルト少佐が生きていました。

これは名探偵コナンでいえば、少年のコナンから高校生の工藤新一へと元に戻ることであり、ドラえもんで言えばのび太が優秀になることであり、バイオハザードで言えばゾンビが全て駆逐れることです。

いわば、状況・世界観を構築する上で絶対条件となる「核」にあたる設定です。

コナンも、早々に新一に戻れては話が終わってしまいます。子供である「状況」で繰り広げられる世界を楽しみます。

ドラえもんも、もしのび太が早々に成熟しては物語が崩壊します。

バイオハザードでも、ゾンビが全ていなくなってしまっては、話が崩壊します。ゾンビがいる世界で起こる人間ドラマやミステリーを楽しむものなのです。

この、「核」となる設定を裏切ってのギルベルトの生存。かなり驚きました。

ヴァイオレットとギルベルトにもう一度会ってほしいという観客のニーズを優先した浅はかな「裏切り」かとも一瞬思いましたが、それさえも物語の加速に使っていく手法には、重ねて驚かせられました。

劇場版というと、物語のサイドに存在するものが多いですが、本作に関しては通常放送の正当な続編であり、終着点でした。

ゆえに、これまでのヴァイオレットを知っている方にはかなりの感動が訪れます。

まとめ

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Photo by Roy S. on Pexels.com
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今回は2020年公開の京アニの傑作映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」をレビューしまシタ。

感情がわかるようになってきているヴァイオレットの様子や、普段感情をあらわにしなかったヴァイオレットがどんどんと表情豊かないなっていく様子など

ここまでの成長を考えてみるからこその感涙なのだと思います。

アニメ的な表現や映像の迫力で積み上げられているのではなく、言葉や会話による感情を受け取る作品としては非常に高評価でした。

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