色々と惜しい挑戦的サイコホラー
今回は2022/4公開の「チューズ・オア・ダイ 恐怖のサバイバルゲーム」をレビューしマス。
筆者評価は★3.4
主演:アイオラ・エヴァンス / エイサ・バターフィールド
監督:トビー・ミーキンズ
ネットフリックスから、新作ホラー映画が出ました。
普段ホラーはあまり好んでみませんが、主演が僕の大好きな「セックス・エデュケーション」のエイサ・バターフィールドということで、視聴することに。
悪くはないのですが、色々と惜しく…。
今回はその辺りをレビューしていきます。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
レトロ収集家の男は、妻と問題児の息子と3人で暮らしています。家庭から逃げたい男は、自分の部屋に閉じこもってゲーム。今日は「呪者」というゲームを初めてプレイ。
2者択一の選択肢を選んでいき、物語を進めていくシナリオ型ゲームのようです。
「聖杯をとる?とらない?」という選択肢を前に、男はとりあえずビールを飲みます。
すると勝手にディスプレイに「とる。中身は空」と表示されます。
男がとったビールの瓶は空です。ゲーム内容が現実とリンクしていることを理解した男。
次の質問は…「彼の舌?彼女の耳?」です。
彼の舌を選択し、恐る恐るリビングへ行くと、そこには息子の舌を切り取った妻が立っているのでした。
3ヶ月後
病気持ちの母親を持つケイラは、家計を支えるためキスメット財閥の清掃員をしています。
清掃員をする傍ら、古い機械を集め、レトロ収集家で機械オタクのアイザックに売っています。
ある日、いつものようにアイザックの元を訪れると、不用品の棚に「呪者」というゲームを発見。
アイザックは不用品の全てを把握しているわけではないので、よくわからない様子。
ゲームクリアで12万5千ドル差し上げますとの記載。記載の電話番号に電話すると、フレディ役で有名なホラーの重鎮俳優の声で自動応答が。
テンションが上がったケイラ。一旦持ち帰り、やってみることに。
夜2時、ダイナーでゲームを開くケイラ。
「コーヒーにする?ケーキにする?」という表示。隣に並べてあるメニューとリンクしていて、妙に思います。
ウェイトレスの女性が話す言葉も、一字一句表示されるように。現実とのリンクをみたケイラ。
「休憩する?続ける?」という選択に、「break(休憩する)」と返答。
すると、ウェイトレスが陳列してあったグラスを一つ一つ壊して(break)いきます。
「もっと壊す?片付ける?」に、片付けると選択。するとウェイトレスは落ちたガラスを口に含み、ゴリゴリと噛み砕いていきます。
彼女は亡くなってしまうのでした。
この後も毎日2時にゲームがスタートし、周りの人間に犠牲が発生します。
アイザックに助けを求め、電話番号から電話先の住所を逆探知。表示された位置へ向かいます。
そこは使わなくなった倉庫。そこにはゲームの制作現場がありました。このゲームは「呪いの文字」をプログラミングに組み込み、ゲーム化したものでした。
アイザックは残された資料からゲーム攻略を探りますが、2時になってもいないのにゲームが始まってしまいます。
画面からは「チート(ズル)をするプレイヤーには罰を」との声。これによりアイザックは死んでしまいます。
失意のケイラは、「次はラスボス戦」との表示に導かれ、森へと車を走らせます。
そこには邸宅が。中に入ると、映画冒頭に登場した家族が。
「ラスボス」とは、冒頭でこの「呪者」をコピーした男でした。
男との戦いに勝ったケイラは、このゲームを使う側(呪う側)の権利を得ます。
製作者であるベックからケイラに電話がかかってきます。「君は、キスメット財閥の社長になったよ。君は誰を呪うんだい」
ケイラは「報いを受けるべき人間よ」と言うのでした。
8bitサウンドとBGMによる「新しいホラー」
本作の秀逸だった点は、ホラー映画に新しい風を吹かせたことです。
特に、無機質でレトロな8bitサウンド(ピコピコ、テロン!など)によって、現実に影響が生まれていく様子に恐怖できます。
リアルなホラーゲームの中に入り込む、というようなスタイルのホラーではなく
80年代のシナリオ型ゲームが、現実に影響を与える。しかも霊的なものではなく「呪い」というテーマもかなり面白いと思います。
これに加えて、日常フェーズでの映像では「今風」なpopsミュージックが流れており、まるで青春学園ドラマのような雰囲気です。
ミッドサマー的な、ホラーとは相反する「明るい」という要素を音楽で入れ込んできたのかなという印象です。ホラー好きからは賛否両論かもしれません。
実害を受けるのは周辺
本作の鍵となり、同時に悪い点とも言えるのが「実害を受けるのは周り」ということです。
ゲームプレイヤーであるケイラ自体には実害はなく、周辺の人物(ウェイトレス・母親・アイザック)に害が及んでいます。
映画冒頭の男も、息子と妻が害を被っているだけで、本人には実害がありません。
これがあまりに不合理です。本人に実害がないということで、その点の緊張感が欠けること、やるせなさが残ります。
とはいえ、元々「呪いをかける側は、呪いを受けるものの苦痛によって癒される」という仕組みになっています。
これは現代社会などで、貧しい国から労働力だけを吸い上げる資本主義の形や、高い税金で飢える国民と肥える貴族などを風刺している仕組みともいえます。
「実害を受けるのは周辺」というメッセージは面白かったですが、もう少しシステムに趣向が必要だったかもしれません。
色々と設定が甘い
最も本作の質を下げてしまっているのは、設定が甘いことです。
level1、ダイナーでのゲームでは、全く関係がないウェイトレスがガラスを食べて死んでしまいます。(ちなみにこのシーンはグロ耐性のある僕でもかなりキツかったです)
level2、ネズミのゲームでは、母親が高所から転落しますが一命を取り留めます。
level3、アイザックの家でのゲームでは、アイザックが仮死状態になりますが、問題なく助かります。
この時点で、levelとはなんなのか。1で激烈な死を遂げているのに、その後誰も死にません。
これが非常に甘いです。何を持って「level」なのかが不明瞭です。
加えて、ゲーム製作者であるベックが突然出てきすぎています。なぜかラスボス設定がゲームのコピーをした男になっています。
ベックから最後電話がかかってきたのも謎です。2に続くのであればまあ…?
アイザックが死んでしまったのも、雑でした。主要なシーンではなく、なんとなく除外された感じです。
最後に元通りになるのかと思いましたが、なりませんでした。
まとめ
今回は「チューズ・オア・ダイ 恐怖のサバイバルゲーム」をレビューしまシタ。
よく考えれば、この邦題はかなりひどいでスネ。
ネット上のレビュー見ていますと、結構賛否両論別れていました。
僕はこういうゲームベースの映画は好きなので、新しいホラーとして新鮮に見れました。
正直痛グロの要素だけ本当に勘弁してほしい…。
冒頭の「Behind you…」からの「Fooled!」みたいなくだりはいかにもギャグっぽい要素で、サイコ感が増えており面白かったですね。
もし2があるなら、もっとこの辺りを増やしてほしいですね。
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