【映画考察】「ロストドーター」母親ができないという苦悩【ネタバレ感想】

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私、母性がないの

今回は、2021年12月にNetflixにて公開された映画「ロストドーター」について考察したいと思います。

主演は、映画「ファーザー」などで知られるオリヴィア・コールマン。
監督は映画「ダークナイト」で女優として出演していた、マギー・ジレンホール。

先に述べておきますと、正直、忌憚のない意見を言うと「いまいち」でした。★3.3くらいといったところでしょうか。

ざっくりあらすじ(ネタバレ)

海辺の街へバカンスに来た、大学教授のレダ(レイダとも?)。休暇中とはいえ、ビーチで本の執筆をしたりと、ゆったりとした時間を過ごしています。

しかしそのビーチや街には他にも観光客がたくさん。ギャアギャアと騒ぐ他の観光客へのフラストレーションが溜まります。その中で、幼い女の子を連れている母親が目に留まります。

自身の子供との過去を思い出しながら、だんだんと不穏な空気に。本の出来心から、幼い女の子が大切にしていた人形を盗んでしまいます。

盗んだことを映画終盤で若い母親にカミングアウト。若い母親にピン?の様なもので脇腹を刺され、ひとりビーチへ。自身の娘に電話をし、にっこりと微笑んで映画は終わりです。

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母性の欠如と、それにもがく主人公

映像としては、ビーチの映像や、美しい街並み、緑など美しい景色が続きます。

主人公のレダは、ひとりで過ごしている時には悠々自適といった感じ。感じのいい男性に対しては、にこやかに会話を済ませ、ゆったりと過ごします。

しかし、ビーチには騒がしい団体客や少年などが。すると非常に不快な感情を露わにします。
団体客が、「家族でここで過ごしたいので、ちょっとズレてもらえるか」とのお願いをしますが、

「私はここが好きなので、どきません。」と言い放ちます。50歳手前の大人としては、大人気ない性格ですね。精神が成熟していないか、もしくは極端に頑固な印象を受けます。

過去の回想では、レダには2人の娘が居たことがわかります。回想の中でレダは2人の娘の子育てにうんざり。何度も名前を呼ばれたり、泣かれたり、遊べと言われたり。レダにとって子育ては耐えられない様子。

娘に対して怒鳴ったり、部屋に閉じ込めたり、無視をしたり。自分の娘ながら、「大嫌い」とまでいってしまいます。

次第にレダは自身に母性がないことを意識していき、最終的に母親を放棄することを選びます。

しかし「その選択をしたこと・母性がない自分」に対して苦しんでいる。いまだに答えを出せない。というのが主な映画の主題でした。

子育ては地獄か

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Photo by Katie E on Pexels.com

この映画の優れていると思うところは、観ている我々、オーディエンス側も、レダの娘2人に対してイライラできるところ。

多くの映画では「子供=愛の結晶・神からの贈り物」として表現され、子供と母親のやりとりは、尊いものとして描かれます。

しかし本作では、煩わしいもの・縛るものとして描かれています。これは映画としてかなりチャレンジングなことです。しかし、それに対して苦悩する主人公を描くことで、しっかりとしたヒューマンドラマ映画に昇華されているんですね。

子育てとは、いつでも幸せなものではありません。まして、母性が欠けている人からすれば、苦痛でしかないでしょう。子供・母親という自分・女性としての自分。さまざまな感情が入り混じった作品です。

通常であれば、「子供を捨てた母親」に対して、観客はマイナスな印象しか受けないでしょう。
しかし、どこかレダの気持ちもわかってしまうような作りとなっています。

回収されない伏線、好きになれない主人公

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Photo by Pixabay on Pexels.com

しかしこの映画、僕の評価は★3.3くらい。

とにかく、映画の進行の仕方が気持ち良くないです。伏線となるであろう事象が数件発生し、それが回収されないで映画が終了する。つまり必要のないシーンが多すぎると思います。

例えば、海の家で働く青年ウィルの「彼らは悪い奴らだから、気をつけて」の発言。

これは「どいてくれますか」と言われた際にその場を動こうとしなかったレダに対し、発せられた言葉です。

しかし映画終了まで特に何も起きません。

また他には、「ビーチで君をみたよ」という老人の発言。レダはその老人を見た覚えがないので、「私はあなたを見てないけど」と返します。サスペンスな発言ですよね。のちに何かにつながりそうです。

特に何もありません。

回想シーンで、海でレダが娘を見失い、名前を叫ぶシーンが出てきます。映画の多くのシーンでビーチが出てきますから、きっと何か関係するのだろうと思いますが

特に何もありません。

この他にも様々な意味ありげなシーンが多くありますが、「意味ありげ」なまま。
正確には、意味があるのでしょうが、あまりにわかりづらいです。

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Photo by Pressmaster on Pexels.com

また、最後まで主人公を「好き」になれません。

常に何かにイライラとしていたり、自分の思い通りにいかないことにも不満そうであったり。

少女の人形を勝手に盗んで、勝手にカミングアウトし「出来心で盗みました」との発言。

観客の心がレダに寄り添おうと歩み寄っても、レダの言動・行動はふらふらとどこかへ行ってしまいます。

良い映画は、主人公が極悪非道人であっても、観客が「好き」になる必要があると思います。

映画「ジョーカー」でも、ジョーカーは人を◯したり、犯罪を犯したりしますが、観客は皆、彼のことが「好き」なのです。だから、良い映画なのです。

しかし本作「ロストドーター」では、最後まで好きになれません。

泥を吐く人形

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Photo by Pixabay on Pexels.com

レダが盗んだ女の子の人形には、海水が入っており、口から泥水を吐きます。

レダが人形を愛情を込めて抱き上げると泥水を吐きます。それをレダはシンクで洗おうとします。

このシーン、これもまた回収等はありませんがレダの性格を表すものになっていると読みました。

愛情を込めて人形を抱くときのレダの表情は、母親そのものです。しかし、口から泥水を吐かれ、服が汚れた際のレダの顔に露わになる不快さは、母親を捨てたレダの過去を表しているように思います。

これはなんとか理解できました。

まとめ

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Photo by Cup of Couple on Pexels.com

今回は、「ロストドーター」についての考察(というより感想)でした。

僕には子供はいませんし、所帯もありません。産みの苦しみを持つことも生涯ありませんから

子供がいる方がみれば、またひとつ違った印象を受けるかもしれません。

が、映画の技法としてあまり好みではなかったことと、主人公を好きになれなかったことで、高評価にはなりませんでした。

どんな感想が生まれるか、是非見てみてください。

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