演じきったルーニー・マーラが魅力
今回は2011年公開の「ドラゴンタトゥーの女」をレビューしマス。
筆者評価は★3.9
主演:ルーニー・マーラ/ダニエル・クレイグ
監督:デヴィット・フィンチャー
23歳の天才ハッカーと、汚名を着せられた新聞記者が協力し、ヴァンゲル家という一族の闇を暴く本作。
デンマークが舞台となっているため、登場人物たちの名前に馴染みがなく、それでいて登場人物がかなり多いので難しかったですが、そこそこ楽しめる映画でした。
凄惨なレイプ描写や拷問シーンがあるため、本格ダーク探偵モノといった感じです。
ヴァンゲル家の長であるヘンリックを演じたのは「クリストファー・プラマー」という俳優なのですが、彼は2021年に亡くなっています。
彼とダニエルクレイグは映画「ナイブズ・アウト」で共演しています。
その時も大富豪一族の長と探偵というポジションで共演していたので、似ている構図ですね。
ちなみにこの「ナイブズ・アウト」も非常に面白いです。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
新聞記者のミカエルは、実業家ヴェンネルストレムの裏社会との取引をスクープしますが、ヴェンネルストレムに嵌められてしまい、汚名を被せられてしまいます。
そんなミカエルに、ヴァンゲル家の長ヘンリックから依頼が来ます。
それは、一家に隠れている「殺人鬼」を捕まえるというもの。
もしこの依頼を達成すれば、汚名を晴らすことができるヴェンネルストレムの決定的な証拠を出すと言います。
ミカエルはヴァンゲル家一族が住む島の離れに住み込みで調査をします。
調査を続ける中で、助手を必要とするミカエル。ヴァンネル家がミカエルがどんな人物なのかを調べた際に使用した調査員、「リスベット」という女性を知ったミカエルは、その調査能力に興味を持ち、接触します。
リスベットと共に調査を進めるミカエル。彼は真相に辿り着きます。
猟奇殺人犯はマルティンでした。
しかし、真相に近づいたことを悟られ、催眠ガスで眠らされてしまうミカエル。
地下室で吊るされ、「処理」されそうになります。
そこへリスベットが駆けつけ、ゴルフクラブでマルティンをぶん殴ります。
マルティンはアゴが砕けますが、その場から車で逃走。
リスベットはバイクでこれを追います。
その後マルティンの乗る車は横転。ガソリンに引火し、大爆発するのでした。
ヘンリックから、依頼内容完了として「証拠」を受け取りますが、全く使い物にならない情報でした。
その様子を見たリズベットは、単身スイスに飛び、ヴェンネルストレムのマフィアの資金洗浄の証拠を集めるのでした。
帰ってきたリズベットにミカエルは礼を言います。その日はクリスマスでした。
リズベットは「今夜の予定は?」とミカエルに聞くと、「娘と会うんだ」とのこと。
「いいね」とリズベット。リズベットはミカエルへのプレゼントの「ライダーススーツ」を仕立て屋に取りにいき、再度ミカエルの元へ向かいます。
しかしそこにいたのは、ミカエルと不倫相手の女性でした。
リズベットはスーツをゴミ箱に放り投げ、闇に消えていくのでした。
主役はリスベット
超ショートな前髪に、竜の耳飾り、白く染められた眉毛に、眉毛・鼻・唇のピアス、竜の刺青。
一度見たら忘れられない圧倒的な存在感を放つリスベット。
映画題名からもわかるように、本作の主人公はこのリスベットです。しかしミカエルがメインのような描かれ方をされているため、誤解を生みやすいところ。
猟奇殺人事件それ自体よりも、事件とミカエルとの関係を通して変わっていくリスベットを楽しむ映画です。
リスベットを演じたルーニー・マーラは、「ジョーカー」のホアキン・フェニックスのパートナー。
オードリー・ヘップバーン役を演じる予定があるなど、美しい女優です。
ここまでパンクな見た目・演技ができるのは本当にすごい。
これに加え、映画内での性的なシーンでは胸もお尻も全出し。相当の女優魂が伺えます。カッコ良すぎる。
ルーニーの女優魂を見るという意味だけでも、見る価値があると思います。
ラストのリスベットの意味
リスベットは12歳で父親を焼殺しています。理由は語られていませんが、性的な暴力に対して、冷静さと嫌悪感を強く抱いていたことから、おそらく父親からレイプされていたと考えられます。
だからこそ、ヴァンゲル家での猟奇殺人事件に興味を持ったのでしょう。
またリスベットはバイセクシャルです。
女性とも寝ていたことと、ミカエルとも寝ていたことからわかります。
こういったさまざまな要素が、世間から認められず「精神異常者」として、10年近く生きてきました。
そんなリスベットは、人とコミュニケーションを極力取らず、誰も信用しないで来ました。
そんな彼女が、ミカエルとの仕事・コミュニケーションの中で段々と心を開いてきます。
初めはミカエルがお茶飲むか?と聞いても「いらない」と断り続けてきた彼女も、最後にはミカエルにコーヒーを淹れてくれました。
それに、ミカエルを助けるためスイスに飛び、危険な調査を行いました。
そしてクリスマスプレゼントまで用意していました。
リスベットが「相手のことを想って行動する」様子が見て取れます。
ミカエルに対して、好意を持ち、信頼を預けようとしていたことは確かです。
しかしそんなリスベットはラスト、ミカエルが不倫相手の女性と歩いているのを見てプレゼントを捨ててしまいます。
これは、「結局いろんな女と会っていやがる!クソ男!」ということに腹を立てたのではないと思います。
リスベットは、ミカエルが「クリスマスに娘のそばに居てやらないこと」に腹を立てたのです。
ミカエルが「娘と会うんだ」とリスベットに言った時、リスベットは心から良いねと思ったはずです。
リスベットには、クリスマスを共に祝う父親はいません。なぜならリスベットが殺したからです。
リスベットは、ミカエルが「良き父」であることを嬉しく思いました。それでいて、娘も、リスベットも裏切ったミカエルに愛想を尽かすのです。
ちょっと無理のあるポイントが目立つ
本作にはいくつか「それはどうなん」というポイントがありました。
先ずは、犯人のマルティンについて。父親と共に特殊な宗教思想から、女性をレイプしては頭部を切り離したり、内臓を取り出したりして殺害するイカれ犯罪者。
実の妹も日常的にレイプしていました。
自宅の地下室にはこれら一連の「処理」を行う防音ガス部屋が用意されており、冷蔵庫には女性の遺体が入っていたりしました。
捜査対象者であるマルティンが、ここまでの施設を隠し通せることが不自然です。
犯行もかなり特徴のある犯行であり、レイプをしていることから女性の体内からマルティンの毛髪や体液等が出ないことも不自然。
あとは保護観察官の太った男について。
リスベットが被保護対象なのを良いことに、性行為を強要するようになります。
家に来るように命じた男は、リスベットの四肢に手錠をかけ、乱暴にレイプします。
これに怒ったリスベットは、後日スタンガンでこの男を気絶させ、拷問します。
「そりゃ、そうやろ」でしかないです。
男がかなりイカれているということで理解するしかないのかもしれませんが
犯罪者心理として、「父親を焼殺しており、過去に数回の逮捕歴がある、全身刺青で顔にピアスだらけの女性」を襲うでしょうか。
なぜ自分のナニを咥えさせれらるのか。噛みちぎられてもおかしくないです。
案の定リスベットに激キツの拷問を受けるのです。
まあ、自業自得なのですが。
まとめ
今回は「ドラゴンタトゥーの女」をレビューしまシタ。
映画全体の登場人物の多さと、前半のミカエルとリスベット合流までのテンポが悪い点が玉に瑕ですが、映像表現が美しく、見ていて飽きません。
リスベットの一挙手一投足が、不思議にずっと見ていられる感があります。
ルーニーの映画はあまり他に見たことがありませんが、これから見ていって良いかもしれません。
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