【映画考察】「残酷で異常」邦題がダサすぎる良作 ★4.0【ネタバレ感想】

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システマティックな死後の世界

今回は、カナダ発のスリラーホラー・ヒューマンドラマ映画「残酷で異常」の考察をしていきたいと思います。

原題は「Cruel and Unusual」。

本作は2014年公開の映画ですので、最近の映画というわけではありません。

主演はカナダ人俳優のデイビット・リッチモンド・ペック。

AmazonPrimeにて配信されていて、なんの気なしの色々とディグっていて見つけた作品でしたが、非常に完成度が高かったです。

製作費はたったの6500万円。スパイダーマンノーウェイホームの製作費が230億なので、それに比べると、お小遣いみたいな額ですね。

ざっくりあらすじ(ネタバレ)

薄暗いバスルームで、心肺停止状態の妻を賢明に心臓マッサージする主人公「エドガー」。

努力虚しく妻は亡くなってしまいます。その直後エドガー自身も亡くなってしまいます。亡くなると同時に、エドガーはなぜか妻を乗せた車を運転していました。

なにがなんだかわからないエドガーですが、とにかく妻と一緒に家に帰ることに。

家のドアを開けると、見覚えのない施設のような空間へワープ。何が何だかわからないエドガーですが、グループセラピーのような集会をしている部屋へ行ってみることに。

そこでの参加者の告白は、自分がどのように人を◯したかについてでした。自分がここにいるのは何かの手違いだと訴えます。すると「7734」の部屋へ行くように指示されます。

そこでエドガーは「君は妻を◯し、君自身も亡くなっているからここへ来た。罪を受け入れなさい」と言われます。そんな覚えはないというエドガー、ドアを開けて外へ出ようとすると、また現実の妻のところへワープさせられます。

また車の運転から始まったことで、気がつきます。自分は、妻が亡くなる日をワープしている。と

だんだんと「その日」を思い出します。エドガーは、妻が作ったスープを飲んでからみるみるうちに具合が悪くなり、救急車を呼ぼうとします。しかし妻は電話を渡しません。渡せ渡さないの取っ組み合いの間で、妻を窒息させてしまい、エドガー自身は毒で亡くなるのです。

その後も何度も何度もワープするうち、気がついていなかったさまざまな罪に気がつきます。

色々あって(ここかなり端折ってます)最終的には、妻を◯してしまうくらいであれば、自◯をすることによって運命を変えようとします。

エドガーが◯殺することによって運命が変わり、映画は終了です。

「地獄」は更生施設だった?

本映画の有名・かつほぼ確実な考察として、エドガーが最初に通される部屋「7734」号室は、数字をデジタル表記し、反対にすると「hELL」になるため、この施設は地獄、もしくはそれに同等の施設であることがわかります。(意味がわからない人は、電卓で打ってみてください)

地獄、ということは確実なことは「エドガーは亡くなっている」「エドガーは生前、地獄へ行くに値する罪を犯している」ということです。

地獄のイメージというと、日本的には針山地獄であったり、血の池地獄であったりと苦痛が絶えない場所ととして描かれます。

キリスト教的にも、永遠の炎で焼かれる場所であったりと、苦痛が絶えない場です。

本作で描かれる「地獄」は、こういった物理的な罰を受けはしません。永遠に罪を犯した日々をループすることによって、自身が犯した罪と向き合わなくてはなりません。そういった意味で「苦痛が絶えない場」となっているのです。

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Photo by Ron Lach on Pexels.com

言うなれば、「更生施設」や「刑務所」のようなイメージ。

とことん自身の犯した罪を考えさせます。

これは、「◯害をした」という瞬間的な罪ではなく、そこに至るまでのプロセスに焦点を絞った更生プログラムとなっており、なぜ自分はそのような行動をしたのか。なぜそのような状況になってしまったのか。どうするべきだったのか。を無限ループの中で考えるようになるというもの。

ただ単純に地獄で苦痛に耐えるだけの生産性のない「罰」ではなく、罪を理解し、認めることが重要なのです。

「地獄」は実はこうしたシステマティックな更生施設的空間なのかもしれません。

結局エドガーの罪はなんだったのか

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Photo by Jerome Dominici on Pexels.com

結局、エドガーの「罪」はなんだったのでしょうか。

もちろん、「妻を◯害した」のは結果として罪でしょうが、そうなった背景に本当の「罪」は存在しています。

エドガーは、妻であるメイロンを深く深く愛していました。しかし、その愛の深さ故にさまざまなものを犠牲にしてしまいます。

①メイロンの意志

まずメイロンの意志を無視してしまいます。メキシコ系であるからか、メイロンには経済力がありません。そんなメイロンに働かせることをせず、必要なものを全て買い与えるという形で「支配」してしまいます。エドガーからすれば、いくらでもお金をあげるという愛の形の現れのつもりでした。

②ゴーガンの存在

メイロンが最も大切の思っている存在は、実の息子であるゴーガン。しかしメイロンを愛しているエドガーからすれば、面白くはありません。あくまでも愛しているのはメイロン。そのメイロンが大切の思っているならという理由で関わっているだけです。

ですから、エドガーはゴーガンに対して良くない感情を常に持っています。
しまいにはゴーガンをメキシコに突き返そうとさえ考えます。

③弟への懐疑

エドガーのせいで社会から孤立してる状態のメイロン、そんな彼女が唯一助けを求められるのは、エドガーの弟であるランスでした。ランスはメイロンからの連絡を受けて、夜、家へ駆けつけます。

事情を知らないエドガーは、ランスとメイロンが浮気関係にあると思い、強い言葉で突き返してしまいます。

④自身が正しいと信じて疑わなかった

最大の罪とも言えるのは、自分の行いを振り返ることをせず、悪い現象が起きた時、全てを周りに原因があると考えてしまうエドガーのマインドでしょう。

このマインドだったからこそ、知らない間に妻がエドガーを○したいと思うまでに憎しみが膨らんでしまったのです。

「受け入れる準備ができたようね」の意味

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Photo by David Panqueva on Pexels.com

グループセッションを取り仕切っている、ブラウン管の中から話す女性は、グループセッション参加者にいくつか質問をした後、「準備ができたようね」というか「座りなさい」と言ってきます。

映画を通して「準備ができたようね」の意味は語られませんがおそらく、「真実を知る準備ができたかどうか」という意味だったと考察できます。

エドガーが7734室の天井にあるハッチから上に出ようとした際、「準備ができていない!」といっていた事から、「準備」は「7734のハッチから上へ出る準備」ができていない事とわかります。

エドガーはハッチから外へ出ることに成功します。すると、エドガーは、ゴーガンやメイロン、ランスとして、「あの日」を追体験するようになります。そして全ての真実と自分の罪を知るのです。

つまり、ハッチの外には「全ての真実」があったのです。7734とは、HELL。最後の最も辛い罰こそがあのハッチを出て真実を知ることにあるのです。

それを受け入れられる心理状況になるまでグループセッションを行うこと。これがあの施設の正体だと考えられます。

映画自体がもう数回目のループ?

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Photo by Johannes Plenio on Pexels.com

映画冒頭で、突然車にワープしたエドガーは混乱。車を降りて周りを見渡しますが、その際、なんの変哲もない木を見て「あの木は…。」と呟きます。

これは映画終盤でわかるのですが、エドガーが自◯を選択した際に使用する木。

しかし自◯を選択するのは数回ループをした後に知る事実です。この時点でただの木に特別な感情を抱くのはおかしいことです。

他の考察をしている記事では「運命」を思わせるための演出だ。と記載している方もいました。

しかしこの映画がループ映画である以上、これもループの一環であると理解するのがスムーズです。

おそらくエドガーは、「妻を◯害し、地獄へ送られ、妻を○すくらいならと自◯する」という1セットを無限に繰り返しているものと思われます。

キリスト教的な自◯の重さ

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Photo by Guilman on Pexels.com

キリスト教的には、命というのは神から与えられるものです。

神から与えられた命を全うすることなく、自分で自分を◯害することは、非常に重い罪とされます。

グループセッションでも、自◯したという女性への周りの当たりの強さがみて取れました。

まとめ

brown fox on the black soil
Photo by Erik Mclean on Pexels.com

今回は、思いがけず見つけた良映画「残酷で異常」の考察をしました。

内容は伏線の回収や、心理描写の移動もスムーズ、展開のテンポもよく非常に良いものでした。

しかしなんといっても、題名とジャケット写真があまりにひどいです。

邦題をつける人のセンスの無さが伺えます。

僕であったらそのまま「クルーエル・アンド・アンユージュアル」しますね。

ジャケット写真は、木をバックに主人公の悲しげな表情出すとかそんなのにします。

考察のしがいのある良作になっていますので、ぜひみてみてください。

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