【映画考察】「Don’t look up」に込められた3つの意味【ネトフリ】

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事実が埋もれていく現代社会への皮肉

2021年12月5日にネットフリックスで公開された映画、「Don’t look up」。

2022年アカデミー賞にもノミネートされている作品です。

内容としては、小惑星と地球の衝突というSFな内容になっていますが、描かれている内容は社会的・写実的そのもの。

今回はそんな本作を通して、現代社会が持つ問題について考察したいと思います。

ざっくりあらすじ(ネタバレ)

ある日、天文学者のミンディ(レオナルド・ディカプリオ)と、教え子のケイト(ジェニファー・ローレンス)は、地球に接近してくる超巨大彗星の存在を確認。

衝突を阻止しなければ、地球上の生命体は死滅してしまうというレベル。

2名はこれを大統領に伝えに行きますが、まともに取り合ってもらえず。テレビやネットでも声をかけますがダメ。

結局色々あって衝突回避できず、ミンディとケイトは家族や友人と食事をしながら爆風に巻き込まれていくのでした。

「まずは静観しましょう」

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Photo by Anna Nekrashevich on Pexels.com

ミンディとケイトが、大統領に彗星の存在と、それに伴う地球の危機、対策の必要性を報告した際、大統領は「まあまずは落ち着いてよく考えましょう。」と言います。

ミンディとケイトからすれば、今すぐに動き出してほしい。しかしそうはいかない。

通常のSF映画の進行であれば、大統領が直ぐに動き始め「どうやって彗星衝突を回避するか」の方へ直ぐにシフトしそうなところ、この映画では、全く動いてくれません。しかしこれが非常にリアル。

大統領にとって、そもそもこの「衝突する」という情報が正しいかどうかを精査する必要は確かにあります。そこまでは理解できても、実際に衝突するとわかった後でも、なかなか動きません。

本作の大統領は支持率が下がっていることもあり、この「衝突回避」が自身の保身にどの様に役立つか、ということしか考えていません。

「世界の安全<自分の地位名誉」なのです。仮にこれが日本が舞台だったらどうなるでしょうか。

もっとひどい状況になることは見えていますよね。コロナ禍でもかなり浮き彫りになったと思います。全てが後手後手。彗星衝突は回避できないでしょう。

世間の関心

crowd dances in blue painted enclosure
Photo by Maurício Mascaro on Pexels.com

大統領では話にならない…世間に直接訴えなくては。ミンディとケイトはTV番組に出演します。

ですがここでも暗雲が。番組進行の2人は、ヘラヘラニコニコと彗星衝突についてユーモアたっぷりに話し、真剣さがありません。

その様子にケイトは泣きながら激怒し、取り乱します。「みんな死ぬのよ!わかってんのかよ!」。

スタジオでは、ミンディとケイトは「ヤバいやつ」扱い。圧倒的少数派。

放送を見た世間の反応も同じ様なもの。取り乱したケイトの様子は、ネット上のミーム(流行りの言葉や画像・おもちゃ)となり、世界的にヤバい女として扱われます。

しかしこれがリアル。

昔、2021年に世界が終わるという都市伝説の様なものが取り上げられたことがありました。それはバラエティー番組でしたし、誰にも真剣には取り合ってもらえません。これが実現しなかったから、いいもののもし真実だったら我々はここにはいませんよね。

また、レオナルド・ディカプリオも、インタビューでこう述べています。

「気候変動についての危険について、数十年前に話していた気候学者の話を、僕たちは無視し続けた。結果その学者の言っている通りになっている。真実に目をむけ、投票などの行動に移さなければならない」

インタビューより

情報を発信する人物の話に耳を貸し、向き合うこと。これが我々にはできていないのです。

映画内では、世間の関心は彗星衝突についてではなく、ビッグカップルの破局ニュースに持ちきり。

ここでもやはり、ミンディ・ケイトと世間との間でギャップが生まれます。

ミンディでさえ堕ちてしまう

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Photo by Alexander Krivitskiy on Pexels.com

ミンディは妻と子供がいるにも関わらず、あれだけバカにし取り合ってもくれなかったTV番組の司会進行をしていた女性タレントと寝てしまいます。

テレビに出たり、世界的に有名になったことから自身の存在を過大に感じてしまいます。

結局それが妻にバレ、見限られてしまうのです。

ここもリアルです。主人公も人間。人生において当たったことのないスポットライト、誘惑・欲望。それに耐えられるほど人間は強くないのかもしれません。

結局、自分のことしか考えていない大統領と同じ。それがわかってしまうのです。

ここで、映画を見ている我々オーディエンスもハッとします。「ミンディー=我々」という視点で映画は進んでいるわけですから、当事者意識が一気に発生します。

コロナウィルスと本作

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Photo by Karolina Grabowska on Pexels.com

本作は、彗星衝突という世界的な危機が描かれており、映画ポスターには「実話に基づくかもしれない物語」と書いてあります。

確かに、彗星衝突の話は現時点では現実に起きてはいません。しかしこの彗星衝突をコロナウィルスに置き換えれば、ほとんど実話と言えるでしょう。

コロナウィルスに関する「事実」は、さまざまな情報によって埋もれたり捻じ曲げられたり、混乱を呼んだりしています。「マスクを」という意見もあれば、「マスク反対」のデモが発生したり。

「ワクチンを」との意見があれば「ワクチンは毒薬だ」という動きが出たり。

そのうちコロナウィルスはある国の陰謀だという情報が出たり、まさに事実を取り上げないという風潮は、世界的も存在していると思います。

日本で見ても、先述したように全て「後手後手」。まさに本作の大統領のような政治家ばかりです。

遅れに遅れてとった政策が布マスクの国民全員配布でしたから…。

そう言った意味で、「Don’t look up」は非常に写実的なのです。

タイトルの意味

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Photo by Simon Robben on Pexels.com

タイトルの「Don’t look up」には3つの意味がかけられていると思います。

空を見上げるな

ひとつは、映画内でも使用されていた「空を見るな」です。

彗星が来ているかどうか、空を見るなという意味です。

この言葉は、政治家の利己的な事情を市民に押し付ける言葉。事実がどうとかではなく、とりあえずつべこべ言わずに空を見るな。つまりは「事実を見るな」ということです。

これは映画内の市民に向けられた「Don’t look up」だと言えるでしょう。

高望みをするな

2つ目は、「高望みをするな」というメッセージ。

本作で大統領は、彗星の含まれるレアメタルを採取するため、企業と結託してリスクの高いプロジェクトを選択します。

成功すれば莫大な金を生むことができますが、失敗する可能性も高い。そして結局失敗してしまうわけです。

これに対してのメッセージ。「高望みをするな」

世界的・社会的な困難の前で、利益や自身の地位名誉を優先し、高望みをすることで世界は悪い方悪い方へと向かってしまいます。

問題を無視するな

3つ目は、「目の前で起きている問題を無視するな」です。

目の前で今起きている問題、コロナウィルス・環境問題・人種問題・ジェンダー・セクシュアリティ…。

こう言ったことを無視するなよ。ということです。

これが、この映画に込められた最も大きい意味なのではないかと思います。

少なくとも、主演のレオナルド・ディカプリオの考え方には最も沿っていると思います。

まとめ

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Photo by Egor Kamelev on Pexels.com

今回はNetflixオリジナル映画「Don’t look up」についての考察でした。

アカデミー賞ノミネートということで、脚本賞あたりは取るのではないかと思っています。

まだまだ公開から数ヶ月しか経っていませんので、今から見ても全然遅くないかと思います。

レオナルド・ディカプリオは、「Once upon a time in Hollywood」での役柄といい、最近は冴えないおじさん役がはまってきています。

相変わらずの演技力の高さが最高です。特に顔を真っ赤にしてブチギレる演技をさせたら右に出るものはありませんね。

ぜひ見てみてください。

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