【TENET】単なるタイムトラベルとの違い【考察】

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起きたことは、起きたこと。

作品情報

作品名:TENET
主演:ジョン・デヴィット・ワシントン
監督:クリストファー・ノーラン
ジャンル:SFスパイアクション
公開日:2020/9
筆者評価:★4.5

ざっくりあらすじ

起:CIA工作員の主人公(ジョン・デヴィット・ワシントン)、テロ阻止ミッションに参加するも失敗。敵に捕らえられるも青酸カリにて自害を選択
承:薬は偽物で、死にはしなかった。目を覚ますとTENETと名乗る組織に。「逆行弾」という時の逆流現象を目の当たりにし、TENETエージェントとして動き始める。
転:全ての元凶であるセイターという男を止めるべく、時を逆行してきた「ニール(ロバート・パティンソン)」と共にいろいろやって戦う。
結:全てが終わり、「ニール」との別れを迎える。

作品中に存在する運命の考え方

本作TENETでは、逆行装置を使用しての「過去への逆行」がキーとなっています。
過去へ戻るという意味では、ドラえもんに登場するタイムマシンもそれにあたりますが、
本作での「逆行」は全く別モノとなっています。

TENET:逆行ドラえもん:タイムマシン
過去への戻り方逆行化装置に入り、出るタイムマシンに乗る
必要となる時間戻りたい年月分
(1年前に戻りたければ、1年必要)
一瞬
他者からの認識後ろ向きに歩いているように見える無し
未来への影響???有り
TENETとドラえもんの比較
TENET逆行装置(回転ドア)
ドラえもんのタイムマシン

ここで重要になるのは、上記表でも「???」と表記した「未来への影響」です。
未来への影響とは、過去での行いが未来へ影響するのかという事。

例えば、タイムマシンで過去へ行き、原始人にスマートフォンを渡したのち、現代に帰ってきた時に
まだ見ぬテクノロジーが生まれていたりするようであれば
過去の行いが、未来を改変したという事になるでしょう。

そもそも過去へ行くことの目的の多くはここにあるように思います。
何か満足のいっていない現状があり、それを修正するために過去へ行く。
ドラえもんなどではこのような話が多いと思います。

しかしTENETでは、この「未来への影響」がうやむやにされています。
「うやむや」といっても、基本的な考え方としては「運命決定論」が採用されており
その上で「多元宇宙論(パラレルワールド)」の可能性を捨てきれないという事で、
「うやむや」になっているという事です。

この「うやむや」のために、運命を受け入れて行動するしかないという、登場人物たちの人生の儚さが光るのです。

決定論と多元宇宙

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Photo by Mat Brown on Pexels.com

決定論とは、「運命は絶対的に決定されたものであり、過去の選択を改めても変わらないもの」とする論。
つまり決定論的にいえば、原始人にスマホを渡しても、興味を示さず川とかに投げてしまい、未来は変わらないという事。

劇中では「祖父○しのパラドックス」という言葉も登場。

親殺しのパラドックス(おやごろしのパラドックス)は、タイムトラベルにまつわるパラドックスで、SF作家ルネ・バルジャベルが1943年の著作 Le Voyageur Imprudent(軽はずみな旅行者)で最初に(この正確な形式で)描いた[1]。英語では grandfather paradox(祖父のパラドックス)と呼ぶ。すなわち、「ある人が時間を遡って、血の繋がった祖父を祖母に出会う前に殺してしまったらどうなるか」というもの

https://ja.wikipedia.org/wiki/親殺しのパラドックス

上記は、決定論的にいえばそもそも祖父を○す事ができない(何かに阻まれるなどする)事になります。

TENETでは、過去へ戻り戦うシーンが多いですが、決定論的にいえば未来は決まっているわけだから
今戦っても、テレビを見てだらだら過ごしても、結局のところ行き着く結論は同じなわけです。

では、なぜみんな命をかけて戦うのか?
それは「多元宇宙の可能性を払拭しきれない」からです。

planet earth
Photo by Pixabay on Pexels.com

2本のくじ、AとBのうち、1本を選ぶとします。
Aを引いたところハズレでした。

多元宇宙論ではこの時、「Aのくじを引いて外れた世界」と「Bを引いて当たった世界」の二つが同時に生まれ、存在するという認識になります。

しかし双方の世界は相互的に認識・鑑賞することはできないため、本当に2つ存在しているかはわからないわけです。

だから、起こったことは起こったこと。

多元宇宙論が存在するため、過去へ戻って戦わなかった場合に、「世界が救われるAという世界」から、「世界が滅ぶBという世界」へ枝分かれする可能性が出るわけです。

だから、戦わなくてはいけないのです。

例え未来でどんな事が起こるかを知っていても、その通りに全身全霊で戦わなくてはいけないのです。

作中で主人公を庇って戦死するニールは、自分がこの後死ぬと分かっていて、主人公の身代わりになりに過去へ戻っていきます。

©︎TENET

「起こったことは、起こったこと」。運命を受け入れて、その上でその運命を遂行する。

それが人間という生き物なのだという、クリストファー・ノーラン監督からのメッセージが感じられます。

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