わかりやすくテンポもいいものの…
今回は2018年公開のスリラーSF「r(a)dius」をレビューしマス。
筆者評価は★3.5
出演:ディエゴ・クラテンホフ
監督:キャロライン・ラブレシュ/スティーブ・レナード
わかりやすい設定と、徐々に明らかになる情報、という外しようがない構成のB級SFです。
スリラーと言えるほどのスリル自体はないものの、設定が面白いので見れた作品。
とはいえ、「記憶喪失物+実は自分は悪いやつだった」という鉄板設定だったので、そこまで評価は伸びずというところ。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
記憶を失って目覚めたリアムは、ふらふらと道を歩みます。
前から来た車に助けを求めますが、車は突然暴走し停車。運転席を見ると女性が絶命していました。
その場で911するリアムですが、警察から「お名前は?」と聞かれ、自分の名前さえわからないことに気がつき、その場を後にします。
近くにあったカフェに入るリアムですが、カフェの中の人々もみんな絶命していました。
毒ガスか何かが原因だと考えたリアムは地図を頼りに、見覚えのある建物に入ります。それは自分の家でした。
そこで色々調べるうちに、「自分に近づいてきた生き物が死んでいく」ということがわかります。
誰とも接触しないように、物置の中で過ごしていると、見知らぬ女性が訪れてきます。
女性はジェーンと名乗り、自分もまた記憶がないと言います。
彼女はリアムに近づいても死にません。
その後ジェーンと行動を共にしますが、周りで即死は起きません。
しかし、ジェーンが遠くに離れた途端、周りで即死が発生します。
リアムの「即死」のは条件があり、「ジェーンが近くにいない時、周囲の生命を即死させる」という物でした。
2人は常に行動を共にしながら、それぞれの記憶を探ります。
記憶を探るうち、ジェーンは行方不明の双子の姉を探していたことを思い出します。
見つからないことに絶望したジェーンが橋から身を投げようとしていたところ、リアムが止めるように声をかけたのでした。
しかしさらに記憶が戻ってくると、恐ろしい事実を思い出します。
実はリアムは連続殺人鬼。双子の妹がいることを知ったリアムは、ジェーンを処分するために接近したのです。
ジェーンが抵抗したので車は横転。危機一髪のところでリアムに雷が落ち、2人は記憶喪失になったのでした。
信頼していたリアムが、最低のクズ野郎だとわかったジェーンはリアムに罵声を浴びせます。
そんなことをしていると、半グレ3人組が近づいてきて、「お前らを差し出せば金になるから」ということで2人は拉致られそうに。
抵抗したところ、ジェーンが撃たれてしまいます。
リアムはジェーンを病院まで運び、手術するように言います。
しかしそれはリアムとジェーンが離れ離れになり、周りの人を殺してしまうことを意味します。
タンカで運ばれていくジェーンを見ながら、リアムは拳銃自殺するのでした。
原因はわからずじまい
映画内のニュースで「被害者の解剖の結果、地球上に存在しない原因で死んでいることがわかりました」と言っていたので、リアムとジェーンに起きている現象は、宇宙からの何か。というところまではわかります。
事件の夜、リアムが落雷に打たれた場所には黒く焼け焦げた円がありました。
その円の中に入ると、人々は死んでいってしまうわけですが、原因・対処法などは全く明かされません。
この手のSFでは「原因が最後までわからないパターン」と「実は宇宙とかじゃなくて人為的な何かパターン」、「夢オチ」の3つが多いのかなという印象ですが、本作は最後までわからないパターンでした。
映画「ミスト」のように、ある日突然、災害のようにたまたま降り注いだもの。と考えるのが良さそうです。
「近づいたら即死」は何を意味する?
ネトフリオリジナルのパニックスリラー「バードボックス」は、「何か」を見てしまうと即死してしまうという設定でした。
その「何か」は感染し、街全体を支配。見せようと人間の声などで誘惑してきたりします。
これは、SNSの流行・見る見られる文化の流行・フェイクニュースへの皮肉が入っているメッセージであることは、映画を見ればわかります。
本作「r(a)dius」は、連続殺人犯である男に「人を殺すことができる能力」が宿されます。
ここのメッセージの解読がかなり難しい。
罪人に「罰」としての何かが降りかかるのではなく、あくまでも被害を被るのは全く関係のない多くの人々。
そして善人であるジェーンもなぜか自分の姉を殺した連続殺人犯と行動を共にしなくてはなりません。
この「円の中に入ったら即死」という能力が、現代社会や文化の何に対してのメッセージなのかが不明瞭です。
例えば、引きこもりで人との繋がりをずっと避けてきた人物にこの能力が芽生えてしまい、しかし愛する女性ができて、でも近づけなくて、、みたいな話であれば、対面コミュニケーションが希薄化した現代をテーマにした作品と理解できます。
逆に他を寄せ付けず、かつ多くの人を殺めるこの能力が何を暗示しているのか。
無理矢理に解釈するのなら、隠蔽しようのない殺人を多数起こすことによって、警察に狙われる身に強制的になってしまうとか?
しっくりきません…。
もっと設定を魅せて欲しかった
「2人が離れてしまうと、周りの人たちを殺害してしまう」という設定自体はかなり面白く、見応えがありました。しかしそれが十分に出しきれていなかった印象。
病院でのエレベーター事案が唯一の見せ場という感じ。とはいえなぜかリアムが途中の階に停止させなかったり、ジェーンが急いでただ階段を駆け降りるだけだったり、見応えがありません。
例えば、片方だけ車で連れ去られて、どっちかが離れないように車で追うようなカーチェイスとか。
2人で離れることがないように手錠をかけて行動するとか。
どっちかが気絶してしまうとか。色々やりようはあったはずですが、ずっと地味な絵が続いていたのは残念でした。
まとめ
今回は「r(a)dius」をレビューしまシタ。
「B級映画!」といった感じの印象を受ける作品で、高い期待を持って見てしまうと、ちょっと拍子抜けしてしまうような本作。
映画「メッセージ」の製作陣が関係しているとのことで見ましたが、メッセージに比べるとお子ちゃまもいいところの出来でした。
とはいえ全く意味がわからないとか、激つまらないとかではないので、評価はそこそこ。
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