【社会学部卒が考える】「プロミシング・ヤング・ウーマン」【ネタバレ感想考察】

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全人類見るべき!これこそ求めていたテーマ!

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今回は2020年公開のスリラー・クライム映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」をレビューしマス。

筆者評価は★4.3

主演:キャシー・マリガン

監督:エメラルド・フェネル

最高の映画に出会いました。

端的いえば男性の標的となる「女性」の苦悩を描いた映画ですが、本作のクオリティはえげつないです。

★4.5以上挙げてもよかったのですが、「ブチ上がる」ようなポイントだけなかったので、★4.3とさせてもらっています。が、映画全体としての完成度はえげつないです。

映画冒頭、僕の大好きなCharliXCXの「Boys」から始まるので、もうその時点でこの映画は「抑圧されている女性」への反抗をテーマにしているということが伺えます。

CharliXCXの「Boys」は、「ワタシ毎日いろんな男のこと考えてるわ〜」という曲。性を表に出さず、清廉・純白を求められる女性像への反抗。そして男性への皮肉を込めた曲です。

主演のキャシー・マリガンは映画「Drive」のヒロイン役も演じていました。かわいいです。記事はこちら↓

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ざっくりあらすじ(ネタバレ)

元医大生のカサンドラは、30を超えた今も実家暮らし。昼はコーヒーショップでアルバイトをしています。

そんなカサンドラには夜の顔があります。クラブやバーに行っては、泥酔したふりをして男からの誘いを待ち、そういった男たちに「なめんなよ」という態度を見せて恐怖に陥れる。

標的となった男性は、100人近くに上っています。

カサンドラは親友で幼馴染の「ニーナ」と共に医学部に入学し、前途有望なはずでした。

しかしニーナは、大学でのパーティーで泥酔し、みんなの見ている前で「アル」という男子学生とセックスさせられてしまいます。

それ以降、ニーナは「みんなの前でアルとヤった女」として扱われるように。

カサンドラは学校にこのことを報告しますが取り合ってもらえません。

ニーナは精神を病み、自殺してしまいます。

カサンドラは現場に居合わせなかったことを悔やみ、以降世の中の「間違い」を正そうと、夜な夜な男を罠にかけているのでした。

ある日コーヒーショップに大学時代の知り合い「ライアン」がきたことをきっかけに、大学時代の周りの人物の今を知ることとなります。

みんな幸せそうです。カサンドラはこれが許せません。

ライアンとは良好な関係を続けますが、当時の関係者にコンタクトを取り、恐怖に陥れます。

しかし、ライアンを両親に紹介した際、父親が「ニーナは娘のように大切な存在だったから、本当に悲しかった。でも今日お前は帰ってきてくれた。嬉しいよ」と言葉をくれたことで、前へ進もうと決意。

「世直し」を辞めようとします。

しかし、当時のニーナの動画が残っていることがわかり、カサンドラがその動画をチェックすると、「ライアン」もまた「全くバカだなあ」と傍観していたことがわかります。

これにより、カサンドラは「世直し」を完遂することを決意。ライアンも敵として判定します。

カサンドラはアルの「独身最後のパーティー」に行きます。

そこでアルとカサンドラは揉め合いとなり、カサンドラは死んでしまいます。

アルはカサンドラの死体を埋め、結婚式を迎えます。

しかしそこへ警察が突入。アルは逮捕されます。

主席していたライアンのスマホには送信予約されていたメッセージが届きます。

「これで終わりだと思った?これからだよ」

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最高の着眼点。「黙認される大罪」

本作が最高なのは、着眼点。

女性・男性という対立を描く映画は多いですが、本作は違います。

「愚かで汚い男性とバカで妥協する女性」vs「ただ普通に生きたい女性・カサンドラ」という、対立軸。

つまり「女性ということによる被害」は男性にのみ原因があるわけではなく、女性もその原因の半分を担っているという点にしっかり着眼できています。

これはかなりの高評価です。

これに加え、世の中で黙認されている罪を取り上げ、描いた点も素晴らしいです。

「ひとり酔っている女性=男を誘っている」と考えたり、「女性に多く酒を注いで泥酔」させたりする行為。

一応、「準強制性交等罪」という罪状で名前がついています。条件は、「相手が心神喪失もしくは抗拒不能状態にあり、性交に及ぶこと」とあります。

しかし、実際にあった判例では泥酔していたとはいえ、「女性が目を開けていたり、声を発していた」ことから、判断能力があると思い行為に及んだため無罪になっていたりと、検挙が難しい罪状でもあります。

このような表出してこない、サイレントレイプとでもいうべきレイプは、世の中に大量に存在しています。

その上で、声を上げることもできない被害者が多いです。

こうした愚かでバカな人々への啓発として、本作は優れています。

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これこそ求めていたテーマ

この、サイレントレイプの低俗さ、そして汚さ、そしてマトモな人間の「生きにくさ」をテーマとした本作。

僕はこのようなメッセージを出してくれる映画を求めていました。

「多くの人はこうだからこう」という考え方の暴力で、マトモな人間は傷ついていきます。

カサンドラが朝早く一人で歩いていると、工事現場の男性らから「朝帰りか?夜はお楽しみだったのか?」と声をかけられます。

これは英語圏で主に見られる「キャットコール」という悪しき文化。美しい女性や、露出の多い女性などに対し男性たちが性的な野次を飛ばすものです。

「みんなしているから」しているし、「朝早くスーツで歩いている女性にはみんな言っているから言ってもいい」と思っているわけです。

この集団心理が本当に愚かです。

僕も、善人ではありません。人生を通して学校の成績は良くなかったですし、先生らとイザコザになったことは多くあります。

きっと善人ではありません。しかしそんな僕にもわかる「悪」とは、「弱者や無知なる者を、自分の利益のためだけに利用すること」です。

酒に酔わせ、何も抵抗ができない「弱者」を、自分の快楽のためだけに「レイプ」する。

このことの浅ましさと、愚かさ、汚さを、世の低俗な男性らと、それを黙認する一部の頭の悪い女性らは知るべきなのです。

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愛する人だと見方が変わる

カサンドラが、当時ニーナが受けた被害を報告した学部長に会いに行くシーン。

カサンドラは会う人が、「更生」しているかを判断します。

実際に数々の加害者の男を弁護してきた男性は、更生していたことがわかったのでカサンドラは「許し」ました。

しかしこの学部長は、更生していませんでした。

ニーナの名前さえ覚えておらず、事件の概要も覚えていませんでした。それどころか、そのことを追求すると「前途有望な男性の未来をそんなことでいちいち奪ってられない」と発言。

この発言が「女性」から出ているところに、この映画の真髄が見られます。

映画題名の「promising young woman」は、「前途有望な女性」という意味。

なぜか、男性の「前途」にだけ保護がかかり、女性はその犠牲になっていきます。そしてその判断を下しているのは男性だけでなく、女性もまたそうなのでした。

カサンドラが、ここから「あなたの娘さん、さっき車で送ってあげたの。酒と男がいっぱいの部屋に」

そういうと、学部長の顔色が変わります。

「娘の場所を言いなさい!イカれ女!」

「愛している人がその対象になっていると、見え方が変わるのよね」とカサンドラ。

カサンドラもまた、ニーナという人生の親友がいなくなってしまったことで、世の中が壊れていることに気づけたのかもしれません。

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死を持って呪い、生を持って償え

カサンドラの心はネックレスのように、半分に割れてしまっています。ニーナがいなくなったあの日から。

カサンドラにとってニーナの元へ行くのが、「自分を取り戻すこと」です。

ゆえにカサンドラは最後死んでしまいます。

送信予約のメッセージがされていたことから、カサンドラはおそらく「死ぬ」つもりでした。

あの用意周到なカサンドラが手錠の一つが外れるようにしておくとは考え難い。

そして恋人であったライアンが自分を裏切ることも見据えていました。

「死を持って償え」とよくセリフがありますが、やはり「生の苦しみでもって償え」が最も酷なのです。

苦しみの中でずっと生きてきたカサンドラはそのことを知っています。

その苦しみを加害者に背負わせ、自分の死で全てを明るみにしたのです。

全部ひっくるめて、本作で一番かわいそうだったのはカサンドラの父親かもしれません。

カサンドラの父親は、カサンドラに理解を示し、本当に心配していました。世間体を気にしてコントロール下に置こうとする母親とは違い、カサンドラを愛し、心配していました。

カサンドラがライアンを連れていきた時の表情や、言動。慈愛を感じられるものでした。

そんな彼は、娘のように思っていたニーナも、カサンドラも失ってしまうのです。

カサンドラの死を知るシーンは映画には描かれていませんが、彼のことを思うと涙が出ますね。

「映画外」のことを考えさせられ、心を動かされるのは「いい映画」の証拠です。

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まとめ

fox sticking it s tongue
Photo by Pixabay on Pexels.com
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今回は「プロミシング・ヤング・ウーマン」をレビューしまシタ。

明るい映像や、各所でのカラフルな色使い、popな音楽などによってうまく包まれている「激重」の社会問題に切り込んだ良作。

サイレントレイプによって多くの人間の人生が壊れていく。そんな映画でした。

おすすめです。

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