【映画レビュー】胸が締め付けられる「天使のくれた時間(2000)」【ネタバレ感想考察】

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「もし」を覗いて気づくこと

KOX
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今回は、2000年公開のラブロマンス「天使のくれた時間(原題:THE FAMILY MAN)」をレビューしマス。

筆者評価は★4.8

主演:ニコラス・ケイジ/ティア・レオーニ

監督:ブレッド・ラトナー

正直言って、これまで観てきたラブロマンス系・ラブストーリー系映画の中ではぶっちぎりの良さでした。

傑作中の傑作。これこそ映画。

ニコラス・ケイジ演じるジャックがパラレルワールドに行ってからは、何気ないシーン全てが煌めいて、涙が溢れました。

号泣です。

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ざっくりあらすじ(ネタバレ)

大学生のジャックとケイトは、ジャックのロンドン留学のため空港で別れを告げます。

しかしケイトが「ここであなたが飛行機に乗ったら、もう2度と会えない気がする。行かないで」と直前で止めます。

ジャックは、「お互いの成功のためにいいことだし、たくさん話し合ったじゃないか。空港では誰もが感傷的になるんだよ」と言って、飛行機に乗ってしまうのでした。

13年後のクリスマス

ニューヨーク・ウォールストリートで投資家として成功を収め、社長にまで上り詰めたジャックは、タワマンの頂上で優雅な生活を送っています。

高級なスーツや時計に身を包んで出勤。秘書から、「ケイト」という人から電話がありましたよと報告を受けるジャック。

「ケイト?大学の頃付き合ってた子だ。クリスマスイヴだから連絡してきたのかな。忙しいから、いいよ折り返さなくて」といってケイトの電話番号が書かれたメモを捨ててしまいます。

クリスマスイヴにもかかわらず残業のジャック。近くの店で飲み物を見ていると、黒人の青年が入ってきてレジの男性に「クリスマスの宝くじが当たったぜ!早くこれを換金してくれよ!」と話しかけます。

しかしレジ打ちの男性はそのくじを見もせずに「そんなイカサマのくじは換金しない。他所へ行ってくれ」と突き返します。

黒人の男性は激怒し、銃を取り出します。

そこへジャックが割って入り、「そのくじを200ドルで買おう」と言います。

命をかけたジャックの交渉によって事なきを得ます。

ジャックは黒人の青年に「君は仕事は何をしてる?なぜ銃を持ってるんだ。やめた方がいい。職業訓練施設とかに行くべきだ。人は誰でも何かを求めているものだから、おかしいことじゃない」と話します。

すると黒人の青年は「俺を救おうとしてるのか?マジかよ。人は誰でも何かを求めてるなら、あんたは?何が足りない?」と聞き返します。

ジャックは「俺はなんでも持ってる」と返します。

黒人の青年は「いいね!これからあんたに起こることは、あんたが招いたことだ。楽しめ」

そう言うとどこかへ足速に消えていきます。

ジャックは帰宅し、ぐっすり眠ります。しかし、朝起きると自分の隣に知らない女性が。それどころか場所も民家の中で、子供と犬が騒いでいます。

動揺するジャックは、車でニューヨークの自分の家へといきますが、下でセキュリティに止められてしまいます。

知り合いもジャックを覚えていません。

会社の社長もジャックではなくなっていました。そこでまたあの黒人の青年に会います。

青年は「今は煌めきを見せてるよ。答えは自分で考えな」とだけ告げられ、なくなく家へと帰ります。

家に帰るとそこにいたのはケイト。ここは、「もしケイトと一緒に生きる道を選んでいたら」の世界でした。

庶民的な服や、美味しくない料理店、子供や犬の世話などに翻弄されながらも、ジャックはそこで自分にとって確かなことを理解していきます。

数週間が経ち、この世界でケイトと生きていこうと決意するジャック。そんな彼の元にまたあの青年が現れます。

「元の世界に帰る時間だよ」

ジャックはケイトに「僕のことを忘れないでくれ、約束してくれ」と言い、元の世界で目が覚めます。

ジャックは、ケイトに会いにいきます。

ケイトは弁護士として成功を収めていました。そんな彼女はパリへの移住が決まり、残っていたジャックの私物を返そうと連絡してきたのでした。

一旦は帰るジャックですが、私物の手帳の中に挟んであった二人の写真を見て、空港へ急ぎます。

搭乗口にいるケイトに「待ってくれ!」と声をかけます。

取り合わないケイトは乗り込もうとしていまします。

ジャックは「二人の子供がいる。娘は歳の割にませているが、それは頭がいい証拠だ。息子は、君の目と同じ目をしてる。じっとものをよく見て、毎日何かを学んでいることがわかる。家は汚いけど、僕らのもの。僕らはここで離れ離れになっても、生きていけるけど、あの素晴らしい二人の生活を選びたい。」と説得。

ケイトは空港に残ることを決め、ラウンジでジャックとコーヒーを飲むのでした。

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人生の選択と、「大切なもの」

人生は選択の連続です。

特に、仕事や恋愛、友人、家族についての選択は、人生の岐路というような言われ方をします。

そして選ばなかった方に「存在したかもしれない世界」をパラレルワールド(並行世界)と言います。

ジャックは、恋愛よりも仕事を選んだことで、大成功を収めました。お金には全く困りません。

しかし、並行世界での自分の生活を体験する中で自分にとって最も大切で確かなものを理解します。

それはケイトという愛でした。

ケイトの存在がジャックを完全なものにしてくれます。

どれだけお金があっても、手にすることのできない、眩い光の結晶のようなケイトの時間が、ジャックには大切でした。

僕たちは誰でも選択をしています。

そして選択しなかった方の世界があったとするなら、その世界での僕はどうなっていたでしょうか。

いろんなことが思い出されて、いろんな後悔が押し寄せてきます。

しかし過去は変えられません。だからこそジャックは、今ここからの選択として「ケイトと人生を共にする」ことを選ぶのです。

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これ以上ない「キレイゴト」で殴られる

本作は、これ以上ないくらいの「綺麗事」に溢れています。

仕事じゃなくて愛を選び、裕福じゃなくても子供たちに囲まれて幸せに暮らす。結婚13年になるのに毎日キスをして、夜は愛し合う。

「この家で白髪になってシワシワになっていきたい」とか

「あなたが本気で転職を考えているなら、子供たちを連れて、この家も捨ててあなたについて行くわ。あなたといることが何よりも大切だから」とか

結婚記念日にはお互いにサプライズをして、誕生日にはオリジナル「愛してる」ソングを歌うとか。

とにかく、胃もたれがするほど、「綺麗事」を放り込まれます。

「綺麗事」という拳で殴られていくような感覚。

もちろん普通の映画なら内容がなく、ペラッペラのラブロマンスと感じることもできるかもしれません。

しかし、本作ではこのあまりにも眩しい日々が「選択しなかった方の世界」の出来事で、失われてしまった存在であるわけです。

この世界での生活が輝けば輝くほど、比例してそれを失った悲しみを深く、深く感じます。

綺麗事に殴られる中で、それが全て失われたものであることを感じ、そのかけがえのなさを理解できます。

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「天使」とは誰か

本作の原題は「THE FAMILY MAN」。直訳では「家庭的な男」。

これを邦題「天使のくれた時間」にしたのは、邦題命名史上(?)最高の功績だと思います。

この映画に関しては、「天使のくれた時間」がぴったりだと思います。

では、「天使」とは誰のことでしょうか。

一義的にしたいのであれば、答えはあの宝くじを握りしめていた「黒人の青年」です。

作中でも唯一、ジャックが「別の世界に来た」という事実を理解していましたし、元の世界に戻る際も現れました。

つまり彼は「天使」で、銃を持った男へと話しかけたジャックに「煌めき」を見て、彼に「もしもの世界」という時間を与えたわけです。

しかし、この題名は多義的であると僕は考えます。

例えば、「天使」はケイトのことでもあります。

ケイトという、大いなる愛がくれた「もしもの世界」での時間。

それがジャックに本当に大切なものとは何かを教えてくれました。

もっと言えば、大学時代に過ごしたケイトとの時間が、ジャックを未婚に踏みとどめたのかもしれないし、クリスマスイブの夜に「もしもの世界」へ連れて行ったのかもしれません。

確かなことは、ジャックにとっての天使は、ケイトであるということです。

それに、「天使」は子供たちかもしれません。

子供たちはよく、「天使のような」という形容詞を受けることがあります。

「もしもの世界」で生まれた二人の子供たちは、もう2度と会うことはできません。

ジャックが彼女たちから受けた愛と、ジャックが彼女たちに送った愛、過ごした「時間」も「天使のくれた時間」です。

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「仕事を頑張ってなぜ悪い」について

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本作のレビューを見ていると、低評価のレビューとして散見されるのが「仕事を頑張って何が悪い?」「独身者をばかにしている」「一人でいい暮らしをするのが幸せだと思う人もいる」という意見。

確かに、ストレートにこの映画を見れば、そう捉えられます。

その意見は最も。しかしこの映画の伝えたいことはそうじゃありません。

ジャックが理解したのは「仕事を頑張っても幸せになれない!」ということではありません。

彼は、仕事ではなく愛を取った方の世界で、「自分にとって何が最も大切なのか」を理解したのです。

この映画が伝えたいのは、「自分にとって何が大切なのかを考え、理解し、選択していこう」ということです。

幸せの形は人それぞれ。という点で意見に際はありません。

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ジャックをひたすら愛しているケイトが魅力

ジャックがケイトにかけた言葉「君は素晴らしい人だ。君と一緒にいると、僕までいいやつになれる」という言葉の通り、ケイトは魅力満載の女性。

心の底からジャックのことを愛していることが、強く伝わってきます。

別世界から突然きたジャックは、元の自分がいた世界とのギャップに適応できず、ひどいことを言ったり、してしまいます。

それでも、ジャックのことを1番に考え、愛し続けるケイト。

やっと子供が寝たからと、セックスに誘ってもジャックは先に寝てしまいます。

そんなジャックに毛布をかけてやり、何も咎めない。

ジャックは、ケイトの深く偉大な愛を感じます。

正直、「当時の男が理想とする女性像」という感じも否めません。

可愛くて、スタイルが良くて、性生活に積極的で、夫を責めない…。

今もし公開したら、ケイトの在り方は変わっていたかもしれません。

ただ、ケイトの行動の節々には、強い愛が宿っていました。

観客も皆、ケイトとジャックの生活をもっと見ていたいという気持ちになります。

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まとめ

fox sticking it s tongue
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今回は「天使のくれた時間」をレビューしまシタ。

人生の選択を迫られたとき、どちらが正解かどうかは、選択してみないとわかりません。

ただ、その選択をするときに「自分にとって大切なもの」を失わない方を選ぶことはできます。

「得るもの」を追うのではなく、今持っているものを失わない方を選ぶ。そんな選択の仕方もあると思います。

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