慈悲深い「死」との恋
今回は「ジョー・ブラックをよろしく(Meet Joe Black)(1998)」をレビューしマス。
筆者評価は★4.0
主演:ブラッド・ピット/アンソニー・ホプキンス
監督:マーティン・ブレスト
3時間越えの長尺映画。ファンタジーロマンスもので、長さの割にシンプルな物語という印象です。
若きブラッド・ピットの美しさと、ヒロインのクレア・フォーラニの美しさ、アンソニー・ホプキンスの味のある演技がよく調和した作品です。
ざっくりあらすじ(ネタバレ感想)
大富豪で社長のビルは、もうすぐ65歳の誕生日を迎える予定です。
そんな彼には娘が2人。アリソンは結婚。スーザンはまだ結婚はしていませんが、彼氏がいます。
ビルは、スーザンが彼氏のことを愛していないのではないかと思い、「本当の恋をしない人生など意味がない、雷に打たれるような恋をしなくては」と声をかけます。
その後、スーザンがカフェに行くと、ブロンドの美しい青年が店にいました。
彼と仲良くなったスーザン。スーザンは、彼の「結婚というのは、相手の望むもの・幸せをお互いが満たしてやろうとすることだ」という言葉に「雷に打たれ」ます。
それじゃあと店を出て別れるスーザンと青年。何度もお互い振り返りますが、ちょうど噛み合わず、そのまま去っていきます。
直後、青年は車に撥ねられてしまいます。
その頃ビルは、会社で心臓の痛みを覚えます。すると何者かの声が聞こえます。「答えはyesだよ」
なんのことかわからないビルですが、とにかく心臓の痛みを抑えようとその場をうまくやり過ごします。
夜、家族での食事を待っているとまた声が聞こえます。「玄関に来ているよ」
ビルがメイドに確認させると、確かに客が来ているとのことでした。図書室に通すよう言い、一人で会いに行くビル。
そこにいたのはあのブロンドの青年でした。
「君が最近抱いている疑問への答えはyesだよ」と言う青年。
ビルは少し考えた後、「死期が近いのか、と言うことか」と言います。
ビルはこの発言と、「普通の人間でない雰囲気」から、この青年が「死」であることを悟ります。
死は、肉体が必要だったため、ちょうど交通事故に遭って死を迎えた肉体を借りているとのことでした。
死は、昨今人間の世界に興味を持っており、死期の近い大富豪であるビルには人間界の案内役に最適だろうと判断。
延命を条件に人間界を案内するように言います。
その後の食事に彼を通すビル。偽名として「ジョー・ブラック」を名乗らせます。
しかしそこには、スーザンが。「今朝の彼だわ。」
ジョーは、彼女のことを知らないので絶妙な空気が流れます。
彼のことが気になるスーザン。好意と疑問の感情で接します。
このふれあいの中でジョーは「愛」を知ります。
やがて二人は愛し合います。
そして人間界を回ったジョーは、そろそろ旅立とうとビルに声をかけます。
誕生日パーティーが終わった後が旅立ちのときです。
ビルは娘たちに、愛していることを伝えます。
ジョーは、スーザンに自分があのコーヒーショップの男とは違うことを「力」を使って伝えます。
その上で、僕が何者であっても君のことを愛し続けるよ。と伝えます。
ビルとジョーは二人で橋を渡って消えていきます。
消えてゆく2人を追いかけてスーザンが橋に近づくと、向こうからジョーが一人帰ってきます。
スーザンが「帰ってきたの?」と話すと、「そうみたいだ。」と返します。
帰ってきたのは「ジョー」ではなく、「コーヒーショップで出会った青年」でした。
スーザンは、またコーヒーショップの青年に出会えた喜びと、ジョーがどこかへ消えてしまったことへの悲しみの間で美しい涙を流すのでした。
「愛」を知る死神
日本語字幕では「死神」と記載されていますが、本編の英語聞く限り「Death」としか言っていないので、彼は死神というよりも「死」そのものなのですが、まあ死神と言ってもいいでしょう。
死神が人間界に来たのは、人間界を知ってみたいという思いと、「孤独をまぬがれたい」という思いがありました。
それは愛を知ることです。
人間界での生活の中でスーザンという愛を知った死神は、スーザンを「あの世」に連れていきたいと考えます。
しかし、スーザンが「あの日コーヒーショップで、相手の望むもの、幸せをお互いが満たそうとするのが結婚だと話した時から、愛しているわ」と言われたことで、
その考えを自分が満たせていないことと、スーザンが愛しているのはあくまでも元々の青年の方だと理解した死神。
スーザンの幸せを叶えるため、自信はその青年とは別人であることを伝え、スーザンを連れて行かずに消えます。
スーザンを遠くから眺める死神の目には、涙が浮かびます。
涙は、心が及ぼす肉体の反応。死神には心が芽生え、愛を理由に涙を流せるようになっているのです。
ピーナッツバターとリンゴ
なぜか「死神」にはお気に入りの食品があるのが定番のようです。
もしかするとジョー・ブラックが最初なのかもしれませんが。
ジョーは、人間界の「ピーナッツバター」が大好き。
何かとピーナッツバターを欲しがります。
「死神」といえば、日本で有名なのは「Death Note」の死神リューク。
彼は人間界のリンゴが大好き。しかもリンゴを定期摂取しないと禁断症状が出てしまうほどとのこと。
死神という恐怖の存在に、親近感と好感を持たせるためのシステム・設定と言えると思います。
「ジョーブラックのピーナッツバター」という慣用句で今後映画界でも使えそうです。
「結局顔じゃん」について
映画を見ている最中にも、きっとこの手のレビューが存在するのだろうな。と思っていましたがやはり存在しました。
「結局顔じゃん」と感じるのは、少し浅いかと思います。もっと深くまでこの映画世界に入り込んで、各キャラクターとハグをするくらいの感覚で見てほしいところ。
スーザンがコーヒー店に入ってきた時、青年の姿は見えませんでした。
青年は妹と電話をしていました。
この時スーザンは電話を聞いて、ニコリと微笑みます。
このシーンが挿しこまれたことの意味は、スーザンは見た目からではなく、中身から人を愛する人物であるということを印象付けるためです。
もしそうでないのなら、最初から姿が見えてればいいわけですから。
とはいえ、中身が死神に変わった後もスーザンが青年に好感を抱いていたのは事実。
スーザンは中身が変わったことを知る由もないので、ただ単純にあの時の青年を追っているわけです。
しかし、グラデーションのように、気がつけば全くの別人である死神を愛していることに気がつくわけです。
これも結局は「見た目」ではなく、全くの「別人格」を愛したということです。
まとめ
今回は1998年公開の「ジョー・ブラックをよろしく」をレビューしまシタ。
ブラッド・ピットの、人間ならざる「何か」を宿した青年の演技が非常にいい良作です。
アンソニー・ホプキンスのセリフひとつひとつに大きな力を感じることができ、特に「去りがたい」は名言です。
ゆったりと時間を過ごす日に良い映画です。
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