真実を捻じ曲げて成り上がる。極悪半沢直樹
今回はネトフリトルコ発のドラマ「鴉が羽ばたけば」をレビューしマス。
筆者評価は★4.2
出演:ビルジェ・アカライ/ミライ・ダネル
監督:デニズ・ヨルルマゼル
Netflixからオリジナルドラマ、「鴉が羽ばたけば」が公開になりました。
鴉という字は初めて見ましたが、「カラス」と読むそう。なぜ馴染み深い「烏」にしなかったのか。
鴉という字のカラスは、不気味で化け物のようなカラスというニュアンスがあるようなので、意外とセンスがありますね。
とはいえ、なんて読むかわからないと検索できずに再生数回らなそうだけどいいのか…?
というのは置いておいて。
トルコの作品はこれまで見たことがありませんでしたが、映像技術や撮り方、音楽の入れ方、脚本などどれもクオリティが高く驚きました。
これまで日本で暮らしてきて、トルコの印象と言えば「トルコアイス」くらい。
そして民族衣装を着て売り捌いているので、発展途上のような印象を受けていました。
が、それは大間違いでした。
めちゃくちゃ先進的。むしろ日本なんかより全然。
日本のドラマよりも数段先を行っていました。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
トルコ1の人気キャスター「マーレ」に憧れる大学生「アスル」は、マーレのようになるため、制作会社のインターンに不正に参加。
他のインターン生たちをSNSなどを巧みに使うことで陥れていきます。
ある日、会社では「ブシュブシュ」という暴露アカウントが話題になります。
そのアカウントは会社内のゴシップや、マーレに関する極秘情報などを暴露しているものでした。
そのアカウントを運営しているのアスルではありません。
アスルはブシュブシュを運営している男性を特定し、手を組みます。
マーレの元恋人で、会社役員のケナンを再燃させようと仕組んだり、マーレの夫にマーレが浮気していると嘘をついたり、ブシュブシュの投稿を使ってマーレの評判を下げたり。
どんどんとエスカレートする「悪巧み」。
マーレは徐々に、自分の周りで色々な良くないことが起きすぎていることに違和感を感じます。
そしてその元凶がアスルにあることを突き止めます。
アスルにそのことを問い詰めると、アスルは全てを話し出します。「あんたが邪魔なのよ!」
マーレはこれを受けて、アスルを地方の新聞社に出向させます。
アスルは新聞社のカメラなどが載っている車を、坂でサイドブレーキを解除して転倒させ、極寒の部屋の窓から雨に打たれることで肺炎を起こすことで、市内の病院に搬送となり、会社に戻ってきます。
その頃ラーレは、夫であるユスフと、ラーレへの恋に再燃するケナンとの関係に極端な決断を迫られていました。
ラーレは、夫ユスフのため、ケナンと今後は仕事をしないことを決めます。
それを知ったアスルは、傷心のケナンの元へ行き、寝ます。
アスルはケナンを自分のものにして成り上がろうとしていたのでした。
それを感じ取ったケナンは激怒し、アスルを解雇してしまいます。
アスルは怒り、マーレの家へ向かいます。口論になった2人は取っ組み合いの喧嘩になり、興奮したアスルは置いてあったトロフィーでマーレを殴ってしまいます。
頭から血を流し倒れるマーレ。アスルが狼狽えていると、そこへブシュブシュが来ます。
逃げろというブシュブシュの声のままその場を後にするアスル。
マーレは、大ごとにしたくないから、部屋の片付けをしてくれとブシュブシュに言います。
家で泣き伏せていたアスルのもとへ、室長のギュルから電話がきます。
ギュルは契約問題でマーレを邪魔に思っていました。アスルと競合してマーレにフェイクニュースを言わせることで、評判を下げようとしていました。
しかしマーレは、そのニュースがフェイクであることを見抜きました。
腐敗してしまった会社を憂いたラーレは、自分の冠番組「アザー・サイド」で、私はこの番組を降ります。と発言。
帰宅の途に着くラーレ。失意の彼女にトルコ中の人々が賞賛の声をかけました。
最後まで真のジャーナリズムを貫いたラーレに、町中から愛しているの声がかけられます。
ラーレがいなくなった「アザー・サイド」のキャスター席に座ることとなったのは、アスルでした。
当初の目的を達成したはずのアスルですが、何か後味の悪いものを残します。
キャスター席から見えたのは、自分の席を狙う新しい「インターン生たち」でした。
X世代vsZ世代
本作は会社などで決定権を持つX世代と、これから成り上がる必要があるZ世代の衝突を極端に描いている作品です。
X世代・・・1965〜1980年までに生まれた人たちのこと
Z世代・・・1997年以降生まれの人たち
パソコンやインターネット、スマートフォンの存在が当たり前の環境で育ってきたZ世代と、変革を経験してきたX世代との間には大きな溝があります。
そんな溝を極端な2人で描いたのが本作の「鴉羽ばたけば」です。
言わずもがな、鴉とは主人公のアスルのこと。
InstagramやTwitterを駆使して情報を収集・操作していくアスルは、Z世代の象徴。
Z世代はより自分が「輝いている」ことを見せるために、日々情報を都合のいいように編集しています。
その対極の存在として「真実だけを伝えようとする」マーレが立ち塞がっているのです。
主人公の最低具合=現代への憂い
本作の主人公、アスルは正真正銘のクズ女です。
嘘を平気でばら撒き、人の努力を踏み躙り、自分のことしか考えていない。
同じZ世代として、「Z世代の象徴」がここまで嫌われているのを見ると、なんとも言えない気持ちになりますが、紛れもないクズです。
インスタに自分のアカウントで投稿したのち、自分で作った別のアカウント数十個を使って、「可愛い!」「いいね!」と自作自演。
自分に人気があるかのように振る舞います。
Twitterでもアカウントを複数個持ち、ありもしない噂を何個も投稿することで、情報をでっち上げようとします。
ここまでは極端だとはいえ、Z世代は常に他者の目に晒され、評価されています。
企業によっては、インスタなどのSNSを見せてくださいと言ってくるところも。
仕事に関係なくても、「どんな人か」を判断するのは会話や共に過ごす時間ではなく、SNSになっています。
極端に言えばSNSで変な投稿をしている人は、人が離れていってしまいます。
そんなZ世代が産んでしまったモンスターこそが、本作の主人公アスルなのです。
皮肉にも、真実を国民に届けるべき「ニュースキャスター」の座に最後に座るのは、嘘で塗り固められ、他者を蹴落とす「嘘の化身」であるアスルなのでした。
なぜそこまでするのか?
なぜアスルは、そこまでマーレに、ニュースキャスターに執着するのか?
そのバックボーンについては、シーズン1では言及されませんでした。
幼少期からマーレのニュースを読む姿を見てきていた様子は描かれていました。
トルコの文化をよく知りませんが、もしかすると人気のニュースキャスターが国で最も有名な女性になる方法なのかもしれません。
アスルは自己承認欲求の化け物ですから、トルコ1の女性になるために、ここまでしていたのかもしれません。
シーズン2はどうなる?
シーズン2があるのかどうかもわかりませんが、おそらくマーレとアスルの戦いは続いていきます。
マーレは依然として国民から支持を得たまま引退していったので、再帰の可能性が高いです。
ここに加えて、アスルの座を狙う新しいインターン生たちや、アスルのせいで立場を追われた人々の復讐が入ってきそうな印象。
アスルはここの地位に来るまでに数多くの犠牲を払ってきてしまっているので、その痛いところを突かれそうです。
まとめ
今回は「鴉羽ばたけば」をレビューしまシタ。
トルコの映像作品に触れる機会は、もしサブスクサービスがなかったらまずあり得なかったと思います。
初めてトルコの映像を見ましたが、その街並みやファッション、文化はかなり先進的でした。
実はトルコは、アメリカ並みのテレビ大国らしく、ドラマへの人気はかなり高いそう。
さらに美男美女大国として知られてお李、優秀な俳優も多いようです。
演技も臭くなく、自然な感情の機微が感じ取られ、素晴らしかったです。
ぜひ見てみてください。
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