【映画レビュー】「レッド・ドラゴン」【ネタバレ感想考察】

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感情を揺さぶるスペクトルクライム

KOX
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今回は、2002年公開の、羊たちの沈黙シリーズ3作目にあたる「レッド・ドラゴン」をご紹介しマス。

筆者評価は★4.4

主演:アンソニー・ホプキンス/エドワード・ノートン

監督:ブレッド・ラトナー

1作目の「羊たちの沈黙」の前日譚を描いた本作。

元FBI捜査官の「ウィル」がレクター博士を逮捕して引退生活を過ごしていたところ、凶悪な犯罪者「ダラハイド」の捜査協力をお願いされ、現場に戻ります。

その際、あのレクター博士と久しぶりに、ガラス越しに再開するのです。

本作は、前作の「ハンニバル」とは違い、1作目の「羊たちの沈黙」と同じく、レクター博士の協力を得ながら凶悪犯逮捕を目指す物語。

やはりこちらのスタイルこそが面白いですね。

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ウィルの勇気とレクターの復讐

本作でレクター博士の過去が明らかになりました。

レクター博士は、犯罪心理学者としてFBI捜査官のウィルの相談役となっていたことが明らかになりました。

もちろん、その頃は「食人犯罪者」であることはバレていません。

ウィルはレクター博士に大きな信頼を寄せていたようですが、その頭脳を信頼していただけに「今回の事件の犯人が、人を食べた可能性」をレクター博士が最初から除外していたことに不信感を覚えます。

これにより2人は差し違え、レクター逮捕につながるわけです。

ウィルは精神を病み、家族と海辺で静かに暮らしていましたが、新たな凶悪犯に逮捕・人命救助のため現場に戻るのです。

ウィルは「人の命を救える可能性があって、なぜこの申し出を断れるのか」と発言しています。

非常に勇気のある人物で、映画終盤にかけてもこの「勇気」が目立ちます。

自分の存在が犯人にばれ、家族が狙われ、住所までも明らかになってもなお、犯人逮捕のために奔走します。

クラリスの「子羊」のように、ウィルにとっての子羊、「レクター博士」と向き合い・会話をして事件解決に向かって走り続けます。

クラリスの羊は、泣き止みません。しかしウィルはレクターに向き合っていくのです。

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哀れなダライハイドへの「撃て」

本作の犯人「ダラハイド」。

ダラハイドは、ヨハネ黙示録に登場する通称「レッド・ドラゴン」を崇拝している、いわゆる悪魔信仰者。

レッド・ドラゴンから「欲しい」と言われた家族を殺害・レイプする犯罪者です。

彼のこの異常な習性は幼少期に原因があります。多くは語られませんが、両親がおらず、祖母によって育てられています。

彼は、祖母から度重なる虐待を受けています。

容姿や行いに対して、毎日のように醜いだのなんだのと罵られ、祖母が気に入らないことをしてしまった際には、ハサミをダラハイドの男性器にかけ、「ちょん切るぞ!」と脅迫。

この気の毒でかわいそうな少年時代が、ダラハイドの世界を歪めてしまったのです。

そんなダラハイドの「人間的な部分」を残したのは、盲目の女性「リーバ」の存在。

リーバは盲目であることから、ダラハイドの容姿を見ることができず、その状態で愛し合うことになります。

自身の醜い容姿を見ないままに自分に好意を抱いてくれるリーバに、ダラハイドは困惑しながらも、人間的な感情を取り戻していきます。

この辺りの感情の動きも非常に素晴らしいです。

ウィルは、そんなダラハイドの過去を知った後には「哀れで悲しい男」と発言しています。

普通の映画であればここで終わるところかもしれません。

しかし本作の素晴らしいところはクライマックス。

死んだと思っていたダラハイドが実は生きており、ウィルの家に侵入しにくるというシーン。

ウィルはダラハイドと撃ち合いになり、満身創痍。

そばにいた妻に「撃て。ダラハイドを撃て!!!」と言います。

妻はダラハイドに4発ほど撃ち、完全に殺害するのです。

つい5分前まで、「悲しき男だ。」と言っていたウィルも、もちろん自分の家族の身に危険が迫っていれば、真っ先に殺害の手段をとるのです。

観客もダラハイドに同情しておきながら、ウィルの息子が人質に取られた途端にダラハイドへの敵対心を剥き出しにします。

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レクターの感情の変化

レクターは、自信を逮捕したウィルに復讐心を抱いていました。

ダラハイドにウィルの住所を伝え、皆殺しにしろとメッセージを出すほどです。

レクターは本作まではウィルをはじめとしたFBIに対して大きな敵対心を持っています。

しかし、彼はこの後彼を訪ねてくる「クラリス」に協力的な姿勢を見せます。

それはなぜでしょうか?

クラリスが美人だったから?それもあるかもしれませんが、本作におけるウィルの存在が大きかったのではないでしょうか。

ウィルが座っていたガラスの向こうのあの椅子に、ウィルが帰ってくることはもうありません。

その椅子に、ウィルに代わるようにして座る女性。人を食うという恐怖の権化である自分の前に座る「勇気」を持った女性こそが「クラリス」だったのです。

レクター博士は、クラリスにウィルを重ねたのかもしれません。

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まとめ

close up photo of a fox
Photo by patrice schoefolt on Pexels.com
KOX
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今回は「レッド・ドラゴン」をレビューしまシタ。

「羊たちの沈黙」と比べると、「ウィル」というキャラクターの造形が「クラリス」よりも浅かった印象があり、やはり名作超えは難しかったようです。

とはいえ、やはりレクターの怖さや、息を呑むシーンも多く素晴らしかったと思います。

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