アイオワの愛と勇気溢れる空気
今回は1989年公開の「フィールド・オブ・ドリームス」をレビューしマス。
筆者評価は★4.0
主演:ケヴィン・コスナー
監督:フィル・アルデン・ロビンソン
ヒューマンドラマ・ファンタジーな映画ではあるものの、なかなかぶっ飛んだ映画でした。
ツッコミどころ・整合性が取れていないところなどが総合的に玉にキズといった感じ。
とはいえ、アイオワの広大な農園と、青く澄み切った空、星の輝く夜といった映像がとても美しく、心穏やかになれる作品でした。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
アイオワで農園を経営しているレイ・キンセラは、ある日何者かの「それを作れば、彼が来る」という声を聞き、農園の中に野球場の幻影を見ます。
レイはコーン畑の半分を野球場に変えます。
するとある日、作った野球場の中に何者かが。それはかつて無実の罪で球界を追われた「シューレス・ジョー」の幽霊でした。
するとまた何者かの「彼の痛みを癒せ」という声が聞こえます。
「彼」をかつて少年の頃読んだ本を書いた作家の「テレンス・マン」だと考えたレイは、会いにいき、共に野球を見ます。
するとまた何者かの声、「やり遂げろ」が聞こえてきます。
テレンス・マンとアイオワに戻るレイ。
帰ってくると、そこには往年の名選手たちが試合する姿が。
農作物の収穫が減ったため、お金が足りなくなってしまったレイ一家。
この土地を手放すべきかと悩むレイ。しかし娘のカリンは「今にみんながここに見にくるから大丈夫だよ」と言います。
売らないことを決めたレイ。
するとそこへ、家出をしたきり、話すことなく死んでいった父親が現れます。
父親に、妻と孫を合わせなかったことを後悔していたレイは、ようやくその長いを叶えることができました。
夜、おびただしい数のヘッドライトの明かりが、例の作った野球場へと向かっているのでした。
「信じて突き進む」を忘れた社会へ
「声が聞こえる」という理由だけで、その声を信じて突き進む。
レイは「野球場を作って、幽霊に試合をさせる」というとっぴもないものへ向かって行っていますが
よく「お告げがありました」みたいなことって言われたりします。
「ここで店をやれってビビッときたんですよ」みたいな。突然一念発起してサラリーマンを辞めたり。
そのお告げみたいなものを、もっと映画的・芸術的に映画的に描いたのが本作です。
レイの父親は、野球選手になるという夢を諦めました。
そんな彼のようにはなりたくない、そう反発心を持っていたレイだからこそ、「声」は聞こえたのかもしれません。
美徳とするには身勝手すぎる
「後先考えずに夢を追うのは尊い」。
言いたいことはわかります。
金銭的な問題から夢を諦めたり、家庭を持ったことで諦めたり、年齢から諦めたり。
そういったことをど返しして夢を追うことの素晴らしさ。
確かにそういったテーマを映画として見るのは、いいこと(?)です。
しかし、この映画を見て「夢を追うことの素晴らしさ」を感じるにしても、レイは身勝手すぎます。
単身者であれば全く問題がなかったのですが…。
妻はもちろんのこと、娘もいながら、家のことを省みず、子供の世話・金のやりくりを全て妻に託して何日も家を空ける。
正直この時点で、なんとも映画に入り込めない感がありました。
もっと問題(?)と感じたのは、「夫の願いを叶えること=妻の幸せ」のような感覚があること。
夫が「声を聞いたんだ」と言い、自分の畑の半分を野球場にしようとしたら、99.99999パーセントの人が「ふざけんな」といって離婚です。
もしくは精神病院に連れていくでしょう。
このデタラメな願いを叶えようとすること=夫の夢を叶えることが妻。みたいな感覚があまり好きじゃありません。
制作側の意図としては、そんな意味はないのでしょうが、結果としてそう受け取れてしまったのが残念です。
もう少し口論するとか、一時的に別居するとか。そういった描写が欲しいところでした。
あまりに肯定的すぎたかなといった印象。
2021年 映画が現実に
映画に登場するアイオワの野球場は、実際に映画制作を伴って作られた野球場として、地元住民と映画ファンに親しまれてきました。
いわゆる聖地というやつ。
映画公開から30年たち、この野球場の横に、さらに巨大な「本物規格」の野球場が完成。そしてそこで、ホワイトソックスvsNYヤンキースの試合が開催されました。
映画と同じように、トウモロコシ畑の中から登場する選手団。
スタジアムの真ん中にはケヴィン・コスナーが。
映画の名台詞「ここは天国か?」もしっかりと入っています。
当時少年少女だったファンも、もう30代・40代。
ホームランの球がトウモロコシ畑に消えていく様は、まさに映画そのものです。
まとめ
今回は「フィールド・オブ・ドリームス」をレビューしまシタ。
映画全体に薫る、アメリカの豊かな田舎町が魅力的。
野球とファンタジーという異色な組み合わせですが、少年から大人までの「夢」を支え。またそれを打ち砕くものとしては野球とファンタジーは相性がいいと言えます。
野球好きの人なら、もっと評価が高くなりそうです。
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