爽やかに香りたつ90年代のアメリカと少年社会
今回は2018年公開の青春映画「mid 90s」をレビューしマス。
筆者評価は★4.3
主演:サニー・スリッチ
監督:ジョナ・ヒル
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」や「ドント・ルック・アップ」で知られるジョナ・ヒルがメガホンをとった本作。
ジョナ自身が幼少期を過ごした90年代ロサンゼルスを舞台に、スケーターたちとの交流の中で成長していく少年を描いた本作。
主演にサニー・スリッチの演技も最強に良かったです。
僕はスタンド・バイミーより全然好きな青春映画でした。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
13歳のスティーヴィーは、母と兄との3人暮らし。いつも兄に力でねじ伏せられては悔しがる日々です。
ある日、スケーターショップで悪ガキグループを見つけます。彼らの自由な振る舞いに憧れをみたスティーヴィーは彼らに接近。
メンバーの一人、ルーベンから話しかけられ、仲間入りを果たします。
スケートがプロ級にうまいブラック「レイ」、口癖がファック!シット!なことから「ファックシット」と呼ばれている少年、小学四年生並みの知能しかないという意味で「フォースグレード」と呼ばれている少年、ルーベン、スティーヴィーの5人のグループとなりました。
彼らとの交流の中で、酒やタバコを覚えていくスティーブ。もちろんスケートも。
ある日、スケートで屋根から屋根へジャンプするチャレンジをすることに。スティーヴィーはまだスケートが下手だったので、周りは止めますが、挑戦することに。案の定屋根から落ちて、スティーヴィーは出血。
しかしこれをきっかけに、グループで一目置かれる存在となります。
その後女の子とのパーティーが開かれ、飲酒・喫煙・ドラッグ・初Hなどを体験したスティーヴィー。ラリって帰宅したスティーヴィーは、母親に激怒されます。
その後、スケーターショップで開かれたパーティーで、母親の忠告を無視して飲酒喫煙をガンガンするスティーヴィー。
仲間もみんな飲んでいました。
パーティー後、ファックシットが女の子とのパーティー会場へハシゴしようと提案します。
嫌がるみんなですが、車で向かうことに。しかしファックシットはベロベロ。車は事故って横転します。
スティーヴィーは出血。手が複雑骨折。病院で目を覚ますと、兄貴がそばに。ジュースを買っておいてくれました。
病院の待合室には、仲間たちが夜通しいてくれました。スティーヴィーの母はその様子を見て、彼らを認めるのでした。
病室でスティーヴィーと再会した彼ら。フォースグレードがずっと取っていた映画を公開するのでした。
友情と少年特有の「世界」
本作は、「爽やかな青春」という一面と「苦い少年世界」という一面を繊細に描いています。
太陽に照らされ、ストリートファッションとhiphopミュージックに身を囲み、仲間とつるむ。
この素晴らしき少年の日々をゆったりと描いています。
これに加えて、少年特有の「悪をしないと仲間に入れない」文化。
ゲームを持っていなければ仲間に入れない。かっこいい靴を持っていないと仲間に入れない。ダサい自転車だと仲間に入れない…。
少年にとって、少年社会で生き抜くことは簡単なことではありません。
財布の紐や、ルール設定権を持っているのが親である以上、その範疇で少年社会でうまくやっていくためには、苦悩が伴います。
危険な行動や違法行為。本作ではクスリや未成年喫煙・飲酒。これが取り上げられています。
誰もが覚えのあるこの記憶を、優しく思い起こさせてくれます。
日本では絶対制作されない映画
日本でこの映画が作成されることは絶対ないでしょうね。
まずそもそも少年がタバコを吸い、飲酒をし、飲酒運転をし、性的な行為に及ぶということがあり得ません。
それよりももっとすごいのは、主演である少年が、本当に少年であること。
当時13歳であったサニーは正真正銘本物の少年。
このサニーの飲酒喫煙ドラッグシーンが多用されていることは日本映画界ではまずあり得ないでしょうね。
一番良かった(?)のは、スティーヴィーが初体験をするシーン。
初体験相手は、イケイケ女子グループの一人、「エスティー」。
エスティーを演じたのは当時28歳のアレクサ・デミー。
28歳の女優と、13歳の子役がキスをして、服を脱ぎ、抱き合う。これは本当に日本ではまずあり得ないですね。
寺田心と武井咲がHするようなものです。
この辺りのアメリカ社会における性の目覚めの速さと、少年の「性」を知っていく好奇心と心の輝きが綺麗に描かれています。
余談ですが、本作を見ることでアメリカにおける「性の目覚めシステム」が理解できたような気がします。
なんとなくはわかっていましたが、もう基本、アメリカにおいて「パーティーに行くこと=セックス」につながっているということですね。
アメリカにおける「セックス」はよりカジュアルで、オープンなものであると考えられます。
パーティー会場には、行為に及ぶための「セックス部屋」が用意されており、そこに2人が消えていくこと=行為に及ぶことということが、周囲に周知されています。
いわば、合コン会場とお持ち帰り会場が同一の現場に用意されているようなものです。
周囲の人物みんなに「お楽しみか?」と冷やかされながらも部屋に消えていく。
この辺りはかなり日本とは違いますね。日本では性を表に出しません。
「いい映画」は…
いい映画は、「どこを切り取っても絵になる」と言います。
本作、mid90sはこの言葉の通り、どこで一時停止しても絵になります。
全シーンに心地よい雰囲気と、少年時代を想起させる香りが漂っており、味わい深くなっています。
特にみんなで集まって、ただただ太陽の下でスケートをして、話す。
この日々の尊さを思わさせられます。
90年代半ばという時代設定も抜群で、スマートフォンのない時代の良さを改めて思わされます。
まとめ
今回は、「mid90s」をレビューしまシタ。
スタンド・バイ・ミー的な「青春映画」ジャンルですが、少年特有の悪質な部分や、貧富、親や兄弟との関係、性の目覚めなどを盛り込んでいる傑作だと思います。
スケート文化に対して理解がないと、あまり刺さらないかもしれませんが、おそらく本国ではかなりの評価なのではないでしょうか。
青春を長らく忘れていた方、是非見てみてください。
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