圧倒的困難の前で急成長を遂げる主人公
今回は、2004年公開のアクション・クライム映画「コラテラル」の感想・考察です。
主演はトム・クルーズとジェイミー・フォックス。監督はマイケル・マン。
トム・クルーズが悪役を演じた数少ない映画の1つです。(しかも極悪)
「コラテラル」とは「巻き添え」という意味。題名の通り、主人公マックスがコラテラルに遭う物語です。
18年も前の作品ですが、最近見たところ非常に面白かったので、記事に残します!
(世間の評価は★3.5あたりのようで、あまり高くありませんが…。僕は★4.2くらいです。)
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
いつか自分でリムジンサービス会社を起業することを夢見て、12年間タクシードライバーをして金を貯める男「マックス(ジェイミー)」。検事をしているという女性客と心地よい会話を済ませ、連絡先もゲット。
直後、女性と入れ替わりで白髪の男「ヴィンセント(トム)」が乗ってきます。軽い会話からマックスがタクシードライバーとして確かな腕を持っていることを見抜いたヴィンセントは「君は腕がいいから、俺が飛行機で帰るまで貸し切りたい。600ドルでどうだ」と破格の提案をしてきます。
マックスはまあ600ドルなら、やってもいいと承諾。これが悪夢の始まりでした。
ヴィンセントの正体はプロの◯し屋でした。銃を向けられながら、始末した男の遺体をトランクに入れるよう指示され、マックスには選択の余地もありません。全部で5人を始末する予定のヴィンセント。残り4人を始末するまでの長い夜が始まります。
道中色々あって、最後のターゲットが、映画冒頭マックスが載せたあの女性検事であることがわかり、マックスは女性を救うためヴィンセントと戦います。
ヴィンセントは胸にマックスからの弾丸を受けて、ゆっくりと息を引き取るのでした。
余談(ジェイミー・フォックスについて)
本作の主人公「マックス」を演じているジェイミー・フォックスですが、2014年の「アメイジング・スパイダーマン2」でも「マックス」役を演じています。
アメスパ2のマックスは、スパイダーマンにとっても超強力な敵であるスーパーヴィラン「エレクトロ」。
このエレクトロですが、原作漫画のスパイダーマンでは白人キャラだったのですが、映画ではBlackであるジェイミーが演じました。
もしかして、コラテラルでマックス役を演じたから、マックスとして、、、?いや考えすぎですね。
多分「マックス」顔なんでしょう。松潤の顔が「潤」顔なのと同じです(多分)
ヴィンセントがとにかくプロ
本作の魅力の1つは、ヴィンセントがどこまでもプロであること。
ただの金儲けの犯罪者だとか、ヤク中だとか、落ちこぼれだとかではなく、仕事として・プロとしての◯し屋なのです。
そのプロっぷりは以下に現れていました。
- 躊躇がないこと
- 必要最低限の◯しだけをすること
- 銃火器の確認
- 状況判断力
- 掌握力
一つ一つ解説します。
1:躊躇がないこと
これは、人を◯すことに全く躊躇がないということ。その◯しが必要であるか・必要でないかという判断というフェーズでは時間をかけることはあっても、処理をするかしないかという点においては曇りない判断を行います。
警察が検死した遺体には、胸に2発と頭に1発、胸の2発は2mmズレているという弾痕が残されており、その正確さがよくわかります。冷静に撃てているということですね。
2:必要最低限の◯しだけをすること
サイコパスや、通り魔であれば、その行為自体に価値を見出しているので不特定多数をターゲットとします。
しかしヴィンセントは、「ターゲットや目撃者、セキュリティ担当者、いく手を阻むあらゆる障害」のみを迅速に排除します。
これは「仕事」を完遂するために必要であるからです。
3:銃火器の確認
プロにとって、銃火器は大切な仕事道具。仕事前に弾倉を確認する様子が描かれており、ここからもヴィンセントがプロフェッショナルであることをよく表現できています。
4:状況判断力
破損したタクシーのまま走行していたため、警察に止まるように言われた際や、タクシー会社の上司からマックスに様子の確認をする電話が来た際など、瞬時に状況を整理し、その時出来うる最も適切な判断を下すことができます。
口から出まかせの嘘を、躊躇なく言い切ったり、計画になかった邪魔者を即時排除したりと、なぜかヴィンセントへの信頼感も芽生えてきます。
5:掌握力
マックスはもちろん、ただのタクシードライバーですから、目の前で起きている衝撃的な状況から逃げ出そうとします。しかしヴィンセントはそうはさせません。
銃と言葉を巧みに使い、ヴィンセントの指示に従うしかない状況を作り上げます。
ターゲットと話すシーンでも一瞬にしてその場を掌握していくトークスキルがクールです。
無駄のない車内トーク
映画では5人の始末する間の移動シーンで、車内トークが繰り広げられます。
タクシーという乗り物は、日本では無言で乗ることも多いかもしれませんが、アメリカでは会話をする文化があります。たまに、日本でもよくお話ししてくるおじさんドライバーっていますよね。
「やあ、LAは初めて?」「観光かい」「仕事は何してるんだい」「天気がどうで」「政治がどうで」
「赤の他人同士の会話」という状況はタクシー車内でのドライバーと客という、特殊な状況です。
本作ではこの「タクシー車内での会話」を極端な状況に押し当て、再現しています。
マックスは、「◯した男は何者なんだ」「あいつがお前に何をしたんだ」「何年この仕事をしてるんだ」「なぜこんなことができる」と質問していきます。
ヴィンセントからは「何年タクシードライバーを」「俺とお前とあの男で何が違う」「その名詞をくれた女には電話したのか」「早くリムジン事業に着手しないのか」と質問がなされます。
双方の質問が、双方の本質に迫る質問でありながら、オーディエンスである我々にも通じる内容であるので、全く中だるみしない洗練されたシーンとなっています。
マックスの凄みが増していく
12年間、別にやりたくないタクシードライバーを「なあなあ」で続けたマックス。
いつかやろう。というマインドで特に行動を起こしてきませんでした。
せっかくもらった女性からの連絡先にも、いつかかけよう。
そんなマックスは、ヴィンセントという存在によって劇的に変わっていきます。
銃を向けられ、命の危険にさらされます。また目の前ではさっきまで楽しそうに話していた男が屍になったりします。
ヴィンセントは言います。「自分が10分後どうなっているか、誰にわかる?」
マックスは、次第に自分が考えていた「いつか」は来ないかもしれない。「今」を生きることの重要さに気付き始めます。
途中、ヴィンセントに代わってマフィアの幹部らしき男と話すシーンがあります。その時のマックスの表情と言葉は、最初のマックスとは全く違います。
覚悟と自信に満ち溢れ、「自分」を理解したと言わんばかりの表情です。
段々とマックスに「凄み」が増していくのがわかります。この辺りのジェイミーの演技力はさすがです。
圧巻のクラブシーン
クラブシーンでの銃撃戦といえば、キアヌ・リーブス主演の「ジョン・ウィック」でのクラブシーンが有名ですが、コラテラルでもクラブでの銃撃戦が繰り広げられます。
ジョン・ウィックでのクラブシーンは、アクションや映像美が素晴らしいものですが、コラテラルはその状況の複雑さが魅力。
このクラブシーンでは
- マックスが犯人だと思っている警察・FBI
- ヴィンセント
- マックス
- ターゲットの男とその派閥
- マックスを怪しんでいるマフィア
- マックスは犯人ではなく他に真犯人がいると睨んでいる刑事
この6派閥が一挙に集結し、それぞれの思惑を持ったまま、戦闘を繰り広げます。
かなり複雑な状況ですが、入り乱れて戦闘するシーンまでの流れが綺麗に持っていけており、驚きました。
確実にこのシーンがこの映画の最も盛り上がるシーンでしたね。
まとめ
今回は「コラテラル」を考察しました。
映像自体も、常に夜であることから、どこかしっとりとした雰囲気があります。
ジョン・ウィックだと、結構グロいシーンがあるので苦手な人には厳しいシーンが多いかと思います。
しかしこのコラテラルは、特にグロテスクなシーンはないので、見やすい映画となっています。
いつかやろうと思っていることも、その「いつか」が訪れるかどうかはわかりません。
行動は早く起こさないといけませんね。
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