映画は「映像」と「音」の2つからできている
今回は、2019年のドキュメンタリー映画、「ようこそ映画音響の世界へ」を考察します。
ハリウッド映画における100年間の「映画音響」の歴史、そしてその世界について深堀した本作。
映画好きなら絶対に見ておきたい高品質の作品となっています。
作中のアン・リー監督の「映画は映像と音の2つでできている」という言葉にはハッとさせられました。
このような本作からの学びと、それに伴う今後の映画の考え方をまとめてみます。
映画音響の夜明け
映画はもともと、サイレント。無音でした。
もし、この無音の映像に音がついたなら、どんな感動的な体験ができるのだろうか。
ここから映画音響の世界は始まりました。黎明期は、映画に合わせてセリフを読み上げ、演奏をするスタイル。そこから蓄音機の発明とともに音を録音し、映像に合わせて流すスタイルへ。
しかし、映画産業において、当初はそこまで音に対しての重要視がされていませんでした。
録音した音声の種類が少ないにも関わらず、その音が使いまわされていたんですね。そのため、作られるすべての映画で同じ銃声がしたりと、まるで工場のような様子だったことが語られています。
しかしこうした状況を打破したのは、いつでも現場の人たちでした。
それは監督や、音響担当者。監督や音響担当者による好奇心や興味、挑戦心が、周囲の意見を押し切って、開拓してきた世界でした。
映画音響における、ビートルズの功績
作中、驚いたのはビートルズの存在が映画音響にも影響を与えていたということ。
ビートルズが始めた「ステレオ」音楽。
当時映画館にはスクリーンの裏のスピーカー1つからの音響しかありませんでした。これを「モノ」と言います。
しかし革新的な音楽体験を推し進めたビートルズの登場によってステレオというニューウェーブが訪れたのです。
左から右へ移動する音…。これを映画世界に持ち込んだのは、なんとビートルズだったのです。これには驚愕でした。全く知りませんでした。作中ではこの立体的な音楽を「具体音楽」としていました。
未知の音を作る
映画「ジュラシックパーク」。
今でこそ、恐竜の声のイメージはなんとなくつくでしょう。しかし今あなたの脳内で流れた恐竜の声は、映画音響担当チームが「作った音」だということを考えてみます。
恐竜にあったことがある人類は、この世にはいません。故に恐竜の鳴き声を知っている人はいません。
こうした「未知の音」を作るのも、映画音響の仕事です。
作中では、動物園へ行き、ライオンやサル、クマの鳴き声を録音し、それを低倍速に編集。さらに逆再生するなどして、未知の生物の「声」を作成していました。
現実に存在する音から作成することで、作られた音であってもリアリティが宿ります。
このようにして「音」が作られているということは、全く知りませんでした。
言語無くして感情を伝える
誰もが知っている、このキャラクター。スターウォーズに登場する世界で1番有名なロボット「R2-D2」。
彼は言語を話しません。
しかし、何を言っているかがわかるし、どんな感情なのかがわかってしまうんです。
R2-D2から発せられる音は、電子音のような音。
この音は音響担当者の声と、キーボードの音を組み合わせてできているのです。
抑揚をつけることによって、観客に感情がわかるような仕組みになっているのです。
加えて、CGアニメーションの先駆者となったPIXARの1986年に作成された「Luxor jr.」。
トイストーリーなどで知られるPIXARにおいて、オープニングに登場するこのライトスタンドのキャラクターは多くの人が見覚えがあるのではないでしょうか。
このキャラクターには、表情も言語もありません。それでも楽しいのだろう。とか悲しいのだろうということが、「音」を介して伝わってくるのです。
こういった音もすべて、音響担当者の情熱によって「作られているもの」だということを今一度理解する必要があります。
映画におけるアフレコ
映画撮影現場では、風の音や飛行機の音、サイレンの音など「邪魔」が多いです。
セリフがよく聞き取れない。なんてことは許されません。
そのため、俳優はそう言った場合、もう一度スタジオで自身の映像に自分で声を当てるのです。
そのほか、群衆がカメラの横を通り抜けていくようなシーンでも、音を後からつけます。
マイクの横を実際にエキストラが駆け抜けていく。揺れるような地面の音や、騒ぐ声などと、別撮りしている群衆の音などを調整し、最適な「音」に再編成して映画に採用する。
こう言った仕事も映画音響の仕事です。
まとめ
今回はドキュメンタリー映画「ようこそ映画音響の世界へ」をもとに、映画音響について考えました。
映画は「映像と音」の2つからできている。という言葉には本当にハッとさせられました。
普段映画を考えるとき、映像のことばかりに気を取られます。しかし、確かに画面外で起きている事象などを理解する際にも音は費用に重要です。
無音のシーンも効果的に使われるべきなんですよね。
こうした音響担当者のあくなき探究心・情熱、そして監督の挑戦によって今の映画があるということを意識して、今後の映画を見ていくことでより映画世界を楽しむことができます。
ドキュメンタリー映画としての品質が非常に高く、映画好きの方なら絶対に欠かせない1本でした。
コメント
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