今もう一度「Nワード」の取り扱いを考える
今回はHIPHOPを中心に「Nワード」について今一度考えてみマス。
特に、黒人人種以外がこのワードを歌うとき、どんなスタンスが必要なのか考えマス。
2022年2月の第56回NFLスーパーボウルのハーフタイムショーを務めた、Dr DreとSnoop Dog。
アメリカ人で知らない人はいない、超有名アーティストの二人。
僕自身も彼らの楽曲が非常に好きであり、特に「The Next Episode」は、言うまでもなく傑作だと思っています。
このハーフタイムショーには、Dr DreがプロデュースしたEminemも登場し、Kendrick Lamarなども登場。
超豪華すぎる、まさに「スーパーボウルのハーフタイムショー」と言う感じでした。
今回はそんな「The Next Episode」を何となく歌っていて、ふと思った事「あれ、俺ってNワード歌っていいんだっけ?」について考えてみようと思ったわけです。
「Nワード」ってそもそも何か?
少し前に、「人種問題について学んでいる」という方と話している時、「Nワード」のことを「NGワード」のことだと思っていた方がいました。
確かに日本で普通に暮らしていては、まず聞くことがない言葉であり、文化です。
とはいえSNSが流行し、世界中の人々と繋がれるようになった現代、この問題について知ることは、もはや必要不可欠と言えるでしょう。
「Nワード」とは、Nから始まる黒人人種を差別する言葉を直接口にしないための言い方で、その中身については以下の通りです。
ニガー(英語: nigger)とは、主に英語圏において、一般に黒人を指す蔑称として用いられるスラングの一つである。和訳は黒んぼ、黒奴[1]。
Wikipediaより
要は、特定の人種や民族を指して使われる差別用語の一つです。
「じゃあ使わないようにすればいいじゃん。使うやつは悪い!」となれば話は簡単なのですが
このNワードの難しいところは、「黒人同士で使用することは許容されている」ということ。
黒人同士が使う場合は「兄弟、仲間、友達」のような親しみを込めたニュアンスで使われます。
汚い言葉という点では共通認識ではあるものの、カジュアルに使われる言葉として流通しています。
これによって主にHiphopなどのブラックミュージックではこのNワードは呼吸するように使われるため、世界的にもみんなが耳にする差別用語となっている、稀有な言葉です。
語源はラテン語で「黒」を意味する「ネグロ」であり、元々は差別的な意味は持っていなかったと言います。
ちなみにネグロ・ニグロという言葉は、映画などで「主人公を助けてくれる黒人」のことを「マジカルニグロ」なんて言ったりもする中で使われています。
今でも使われることはしばしばあるものの、基本的にはもう「ネグロ」も差別的なのでは?という風潮があるのであまり大きくは使われない微妙なワードです。
取り扱いにおけるトラブル
このNワードの取り扱いをめぐっては、様々な言説が存在します。
実際にトラブルも起こっていて、その一例として韓国のガールズグループ「aespa」のメンバーであるジゼルが、公開された動画の中でSZAの曲「Love Galore」を口パクした際、Nワードも口パクしたことが大炎上。
「勉強が足りなかった。好きな歌だったので興奮してしまった」と謝罪にまで至りました。
他の例では、ケンドリック・ラマーが行ったライブの中で、白人女性のお客さんをステージ上に上げ、ケンドリックの「M.A.A.D City」歌っていたところ、大量に出てくるNワードをそのまま歌ってしまい
大量のブーイングが発生。ケンドリックもライブを一旦中止するという事態にまでなりました。
これらのことからわかるのは、Nワードは「超センシティブワード」であるということです。
ジゼルの件に関しては、「既に存在している歌に合わせ、しかも発音せず口パクをしただけ」でした。もちろんこの行動に差別的な意思や悪意がなかったことは明白ではありますが、それでも謝罪に至るまでの炎上を見せました。
ケンドリックの件に関しては、自身の歌を歌う際に、白人女性ファンをステージに上げておきながら、歌詞に忠実にNワードを歌ったところ大ブーイング。これも白人女性は好きだから忠実に歌っただけだったようなので、悪意がないことは明白でした。
しかし、こういた類の差別やセクハラ・パワハラの難しい点は、「受け取った側の解釈」によってその姿を変えるところにあります。
そういった意味では、悪意があろうとなかろうとその言葉を黒人以外が口にすることはタブーなのです。
本記事タイトルへの回答は
ここで本記事タイトルの「歌詞に忠実にNワードを歌ってもダメなのか」という問いへの回答を出しましょう。
ここまで読んでいただければ明白かとは思いますが、「ダメ」です。
日本人やその他の当事者以外が思っているよりも、このNワードはセンシティブなワードです。
日本語の「苦い」という発音を聞いた黒人が、Nワードを言われたと思ってブチギレるなど、それに近しい言葉にも注意が必要なほど。
そこに悪意があろうがなかろうが、使用は避けるべきワードなのです。
まとめ
今回は、HIPHOPから考える「Nワードの取り扱い」について考えまシタ。
自分の好きなアーティストの歌を、歌詞通り歌いたい。
この思いは本当にわかるところではあります。
とはいえ、本当に好きなのであれば、そのアーティストや歌の持つ文化的な背景や、歴史まで考えるべきです。
現時点、現社会においてはまず「Nワード」を歌うことは避けるべきでしょう。
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