ハング・オーバー!のサスペンスバージョン
今回は2022/3/3公開のサスペンス映画「ウィークエンド・アウェイ」について考察したいと思います。
派手なアクションや、銃撃戦、カーチェイスなどがあるわけではないですが、風景や雰囲気の美しさと不穏な空気、伏線や謎など完成度は高い作品でした。
二日酔いして朝起きたら昨夜のこと何も覚えていなくて、友達が消えている。という「ハングオーバー!」と同じ作りでした。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
久しぶりに親友のケイトと、クロアチア旅行へ来た主人公ベス。
ベスは赤ちゃんが産まれてまだ日が浅く、夫のロブに任せて旅行に来ました。
この日のために、ケイトにネックレスもプレゼントしました。
ロブは、学生時代にケイトからの紹介でベスと出会っています。ケイトがキューピッドですね。
ベスとケイトの2人は、久しぶりの再会ということもあり、近況報告話に花を咲かせます。
ケイトは、ベスが最近ロブと”ご無沙汰”ということを聞き、「信じられない!」と冗談っぽく騒ぎます。
「クラブでも行って、ハメ外しましょ!」とケイト。
あまり乗り気じゃないベスですが、元々ケイトの性格は対照的だったし、そんな彼女が好きだったので、行ってみることにします。
そこで2人の男と一緒に飲んだのが最後の記憶。朝、部屋で目を覚ますと、ひどい頭痛と吐き気で何も覚えていません。ケイトの姿もありません。
ベスは前日の様子や、行った店、ベスとの会話などを思い出そうとしますが、あまり思い出せない。
警察へ行き、事情を説明しますが、ろくに取り合ってもらえません。
すると次々と不穏な真実が明らかになります。昨日会った男2人組の正体は毎回観光客を見つけては睡眠薬を盛り、寝ている間に盗みを働く犯罪者でした。
ベスはこの2人が何らかの理由でケイトを◯したのではないかと疑います。
しかし、そんな時、ケイトの水死体が上がります。死亡推定時刻から、盗人2名ではないことがわかります。
警察は、ベスも疑い始めます。ベスはケイトのスマホをケイトの遺体にかざし、Face Lockでスマホを開けます。
するとそこには、ケイトが亡くなる前に「雑用係」という名前で登録された人物からの着信履歴が。
ベスは恐る恐るその番号にかけてみます。すると、「ロブです。留守番メッセージをどうぞ」の声。
ベスは驚愕します。メッセージのやりとりも確認したところ、「昨晩は最高だった」とか、「いつ会える?」とか。ケイトとロブは不倫していたのです。
ベスは、不倫をされていたことと、もしかすると夫がケイトを◯したかもしれないという事実に衝撃を受けます。
ベスは次第に、周りの人物全てが信じられなくなります。警察はベスを容疑者ともしだす始末。
その後も次々真実が明らかになります。結局、ケイトを◯したのは、観光課の警察の男でした。
彼は多数の女性に性的暴行をしている男だったのです。事件が解決し、悲しみと共にベスは帰国します。
ロブの不倫をうまく許せないまま、過ごしていたある日、クローゼットで探し物をしていたところ、ロブのジャケットの中に何かが入っているのに気づきます。恐る恐る取り出すと、それは、ベスがケイトにプレゼントしたネックレスの破片だったのです。
これによりベスは、警官の男は犯人ではなく、実はロブがケイトを◯したのだと確信します。
問い詰めると、ロブは全てを語り出したのです。ベスは、ロブの制止を振り解き(膝蹴りも入れて)、
警察署へと足をすすめるのでした。
クロアチアの街並みが美しい
クロアチアはイタリアのすぐ隣の国。アドリア海という美しい海に囲まれたリゾート地があります。
今回はそんな美しい街が舞台の映画。女性2人で旅行に来るのにもぴったりですね。
オレンジ色の屋根が立ち並ぶ空撮映像もとても美しいです。海の色・空も青々と美しく、映画全体の雰囲気としてみていて飽きないものがあります。
映画においてこうした雰囲気の美しさ・映像の美しさは重要で、映画「ミッドサマー」のような美しい風景+狂気という対立構造が、その狂気を引き立てる役割も持っています。
風景という点以外でも、映画全体として中間色っぽい色づかいがなされており、透明感のある映画となっています。
細かい表情の演技が素晴らしい
1回目だと、気がつきにくい絶妙な表情の変化が秀逸です。
再会を喜んでハグをするシーンで、ケイトはにこやかな顔の中に一瞬、迷いや後ろめたさを感じさせるような表情をします。
これは、親友であるベスの夫、ロブと自分が不倫をしてしまっていることからの感情だとわかります。
また、ケイトはベスに対してロブとの関係を打ち明けるかどうか、悩んでいたのでしょう。
複雑な感情をこの1秒にも満たない瞬間に詰め込んでいるこのシーンはかなりの完成度です。
これが「演技」なんですね。
「動き」と「演技」の違いについての記事は https://coffeeofroadrunner.com/【映画考察】浅草キッドと邦画世界【netflix】/ をチェックいただければと思います。
ロブとテレビ通話をするシーンでも、横からケイトが登場した際の絶妙な表情の変化も素晴らしいです。
俳優も凄いですが、おそらく監督からの指示なのでしょう。監督のこだわりが感じられます。
ややこしいやつが多すぎる
サスペンス作品なので、「怪しいやつ」が大量に出てきます。それはまあいいとして。
本作品は「怪しいやつ」なだけじゃなくて、そいつらが何かしらの犯罪者なのがややこしい笑。
普通、「怪しいと思っていたけど、実は全然違くて普通の人だった」というパターンが多いかと思います。
しかし本作は違います。「怪しいと思っていたけど、ケイトを◯害してはいなかった。でも犯罪者だった。」というパターン。
例えば、最初に疑われる2人組の男。ケイト◯害には関わっていませんでしたが、窃盗犯で、実際に睡眠薬は盛られていました。これのせいでベスは記憶が無くなってしまったんですからね。
次に疑うのは、ベスとケイトが泊まっていたホテルの管理人の男。彼はホテル宿泊者の様子をカメラで録画しており、その様子をコレクションする変態でした。
ケイトを◯害してはないけど、犯罪者です。
次は警察の男。こいつもケイトを◯害こそしていませんでしたが、警察の権力を利用した性犯罪者でした。
次はタクシー運転手のゼイン。彼は結果いい人でしたが、シリアからクロアチアに逃げてきた際に犯罪組織とやり取りをした過去がありました。
こんな感じでとにかくややこしい奴が多すぎます。見ていて全員怪しいのは、全員闇の部分を持っているからだった、という。「容疑者Xの献身」スタイルのトリックですね。
テンポもいい。でも終わり方がいまひとつ
物語のだらっとしてしまうような部分はバツバツとハサミが入り、非常にテンポがいいです。
しっかりと情報が入ってきながらも飽きが来ないようにデザインされていました。
上映時間も90分と短く、気軽に見られる作品になってますね。「アイリッシュマン」の半分ですから。
しかし、終わり方がちょっとだけ残念。
夫が真犯人とわかり、膝蹴りを入れて娘を持って出ていくところで映画は終わります。
取り用によっては、強い母というか。「父のいない娘」よりも「犯罪者の娘」になることを拒んだというシーンで綺麗にまとまっているように見えます。
それか、不倫をしたケイトは亡くなり、ロブは娘と妻を失い警察に捕まる(であろう)という、自業自得の話とも取れます。
しかし、それにしてもちょっと救いがなさすぎる。主人公とその娘がめちゃくちゃに可哀想なまま映画が終わってしまいます。最後の最後に、ずっと優しくしてくれたタクシー運転手のゼインが来てくれれば…。
ゼインと人生を歩むことにした。みたいな終わり方の方が救いがありました。
まあ、この試聴後のモヤモヤも楽しんでねという監督の意図なのかもしれませんが。。
まとめ
今回は、NETFLIXで配信が開始した「ウィークエンド・アウェイ」の考察でした。
作品全体の映像と雰囲気が美しいので、サスペンスですがゆったりと見ることもできます。
グロシーンなどは基本ないので、そういったものが苦手な方でも見れると思います。
先述した「ハングオーバー!」もかなり面白いので、ぜひ見たことがない方は見てみてくださいね。
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