古典的な「観る、観られる」を元に現代を風刺
![KOX](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2022/07/98A544F1-4A17-48FC-BD32-1A0C74DF181A-e1658394200729-150x150.png?resize=150%2C150&ssl=1)
今回は、2021年公開のAmazonオリジナル スリラー映画「観察者」を解説します。
KOXの評価:★3.3
出演:シドニー・スウィーニー/ジャスティス・スミス/ベン・ハーディー ほか
監督:マイケル・モーハン
味わい映画を作ってくれるとそこそこ話題のAmazonオリジナルシリーズから、今回はちょっと気持ちわるい系の映画「観測者」をレビュー・解説していきます。
主演の女性シドニー・スウィーニーは、一部ドラマファンからはアツい人気を誇る演技派俳優。
サイコ・スリラーものをやらせれば間違いなしという感じの俳優さんですね。
話自体は割と単純。終わり方も割とハッキリしてくれているので、スッキリ観れる映画かと思います。
どんな映画?
- 他人の性生活を覗きみて、介入。思わぬほうへ進んでいく エロス・スリラー映画
- アクションなどは無く、舞台も部屋が主体の低予算映画
- 強めのエロ、微グロあり
- 明確な結末がありつつ、一部観る側にも委ねてくれるバランスのいい映画
トーマスは他殺か、自殺か
![](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2023/05/スクリーンショット-2023-05-04-12.58.15.png?resize=858%2C391&ssl=1)
本作で唯一の犠牲者である「トーマス」。
ピッパのボーイフレンドである彼は、ピッパの暴走する覗き欲に危機感を覚え、止めるようなシーンもありました。
しかしピッパは止まらず、隣人の性事情に干渉。それが原因となり、隣人の女性は交際相手の浮気を知ってしまい自殺をしてしまします。(実際は死んでいなかったけど。)
これをキッカケにトーマスはピッパの元を離れることに。
傷心のピッパは、隣人の男性に接近し、抱かれます。
ピッパと話をしようと帰ってきたトーマスは、隣の部屋でピッパが抱かれる姿を目撃してしまいます。
そして次のシーンで、ピッパが自宅へ帰ると…トーマスが首を吊っているのでした…。
![contrast wall of modern building with hanging lamp outdoors](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2023/05/pexels-photo-4004210-edited.jpeg?resize=691%2C388&ssl=1)
映画としてはこの後、「実はすべて仕組まれていた」「トーマスはワインに盛られた毒で死に、その後自殺に偽装された」という話の展開で進んでいきます。
ピッパが復讐を果たし、物語は終了となるわけですが1点だけ考えるべき箇所があります。
それは「トーマスは本当に他殺なのか」と言うことです。
トーマスは毒入りのワインを飲んでいるため、遅かれ早かれ死んでいた可能性はあります。
とはいえ、ワインの毒で死ぬ前にトーマスが自分の意志で首を吊った可能性は残されています。
![](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2023/05/スクリーンショット-2023-05-05-10.30.37.png?resize=772%2C318&ssl=1)
ピッパの推理のもと、再現シーンが流れますが、あれはあくまでピッパの思考の範囲内。
実際に自分を捨てて、すぐ隣の「最低なヤリチン男」の元に駆け込んだピッパをみて落胆したことは間違いありません。
この映画では、悪役として隣の部屋の夫婦が置かれていますが、実際のところ最もタチが悪い「悪」はピッパなのではないでしょうか。
「視線がテーマ」に新しさがない
![crop unrecognizable person with bright eye and rare eyelashes](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2023/05/pexels-photo-3876937-edited.jpeg?resize=670%2C419&ssl=1)
本作では間違いなく「目」が最も重要なキーワードになります。もっと正確に言えば「視線」。
映画の開幕から人間の虹彩のアップ、中身でもポスターや置物が目の形をしていたり、主人公が眼科医だったりと露骨に「目」が推されます。
こういった、他社からの「視線」をテーマにした映画自体はかなり近年多く、特段新しさはありません。
新しい=優れている と言うわけではありませんが、観進める上でのモチベーションは上がりきりません。
その分、隣人の性生活が丸見えになってしまうと言う「新しさ」を持ち込んで補っている。といった所でしょうか。(とはいえ、官能映画ではよくある設定のようですが)
SNS社会への風刺…?
![grey scale photo of person holding smartphone](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2023/05/pexels-photo-1100447.jpeg?resize=687%2C458&ssl=1)
おそらく、この映画は「SNSをはじめとした監視詮索社会を風刺」しているものです。
見出しに”?”をつけたのは、正直言って分かりにくいため。
この映画では、物理的な視界として、隣人の部屋への視線と、隣人の一つ上の階からこちらへ向けられた視線が出てきます。
この2つを通して、「必要以上に人の生活を詮索する事、そして自分の生活を開く事」への警鐘を鳴らしています。
しかしこれ、かなり分かりにくい。
オープンになっている事象が性生活である以上、一般的にオープンにする「日常生活」とかけ離れるため、現実性が損なわれます。
SNSで公開される情報は「投稿者が取捨選択して公開を決定した情報」であり、能動的な情報発信と言えます。
しかしこう言った、「意図しない情報が公開されてしまった」、受動的な情報発信は、SNSというよりも、芸能人やセレブのスクープ写真やニュースに近いものがあります。
つまり、情報の公開というテーマの中に、「意図するもの」と「意図しないもの」の双方が混在してしまっており、視点がブレてしまうのです。
これがかなりこの映画を惜しいものにしています。
この俳優…誰かと思ったら…!
![](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2023/05/スクリーンショット-2023-05-05-11.14.43.png?resize=1024%2C367&ssl=1)
隣に住み、カーテン全開のまま生活する変人であるこの男性。
何かの作品で見たことがあるなと思っていて、鑑賞後調べてみたら…
名前は「ベン・ハーディー」という俳優さん。
なんとボヘミアン・ラプソディのドラム、ロジャー役の俳優さんでした。
筋肉隆々の肉体美と甘いマスクで、ゲイ雑誌の表紙を2回飾るほど、ゲイからの人気が高いらしいです。
ボヘミアンの頃から確かにめちゃくちゃカッコよかった。
今回そこまでセリフ量がないのですが、圧倒的な存在感で映画の軸となっていました。
ベンの演技を見たいという方なら、今作は大いに楽しめるのではないかと思います。
まとめ
![adorable animal canine cute](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2023/05/pexels-photo-271932-edited.jpeg?resize=627%2C392&ssl=1)
![KOX](https://i0.wp.com/coffeeofroadrunner.com/wp-content/uploads/2022/07/98A544F1-4A17-48FC-BD32-1A0C74DF181A-e1658394200729-150x150.png?resize=150%2C150&ssl=1)
今回はAmazonオリジナル映画「観察者」をレビューしました。
正直言って、同じAmazon映画の「僕を育てたテンダーバー」と比べると、諸々劣る点があります。
物語が「世にも奇妙な物語」とか、「ブラックミラー」の1話分くらいしか内容がないので、わざわざ本作を見る必要性もないかな…という所。
とは言え、逆に言えば、世にもやブラックミラーの1話分の面白さは担保されているので、目当ての俳優がいる場合には見てもいいのではないかと思います。
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